実証的段階
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/23 01:05 UTC 版)
人間の思考が成熟すると、究明が不可能な諸現象の根本的原因を想像によって説明することが無意味であることに気づき、観察できる事実に認識の焦点をあわせるようになる。これが実証主義の基本的な認識方法である(観察に対する想像の従属)。 同時に、実証主義は人間の観察能力には限界があることを認める。それゆえ、それは神学的・形而上学的な認識とちがって、自己を絶対視することはない(相対性)。とはいえ、実証主義はたんに雑多な事実を観察して記述することが目的ではない。さまざまな現象間にみられる「法則」(経験的規則性)を見いだし、この「法則」にもとづいて、さまざまな予見をすることが目的なのである。「予見するために見る(フランス語: voir pour prévoir)」がコントのモットーである(3章)。 経験科学のなかで最初に実証的な段階に到達した天文学を例にしよう。天文学では、ケプラーによって、太陽のまわりを回転する地球が正確な楕円軌道を描くことが発見された。さらに、ニュートン力学は、地球が楕円軌道をとることも、新月や満月のときに大潮が起こることも、同じ法則によって説明した。コントによれば、これは実証主義的な説明である。それは神学的説明のように、なぜ万物は引力をもつのかというような説明不可能なことをあえて追求せず、諸現象の関連をひとつの法則で記述しているだけだからである。しかも、この法則は未知の惑星の軌道を予見するような精密な推論も可能にする。
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