塩酸グアニジンとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 化学 > 化学物質 > グアニジン > 塩酸グアニジンの意味・解説 

塩酸グアニジン

分子式CH5N3 ClH
その他の名称Guanidine monohydrochloride、USAF EK-749、Guanidine hydrochloride、グアニジン塩酸塩グアニジン塩酸、GdmCl、塩酸グアニジン、カルバミジン塩酸塩、Carbamidine hydrochloride、Guanidine・hydrochloric acidGuanidine・hydrochloride
体系名:グアニジン・塩酸塩グアニジン塩酸


塩酸グアニジン

英訳・(英)同義/類義語:guanidine hydrochloride

グアニジン塩酸塩

塩化グアニジニウム

(塩酸グアニジン から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/13 06:56 UTC 版)

塩化グアニジニウム
識別情報
3D model (JSmol)
ChEBI
ChemSpider
ECHA InfoCard 100.000.003
PubChem CID
UNII
CompTox Dashboard (EPA)
特性
化学式 CH6ClN3
モル質量 95.53 g mol−1
密度 1.354 g/cm3 at 20℃
融点

182.3 °C, 455 K, 360 °F

への溶解度 水やエタノールによく溶ける[1]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

塩化グアニジニウム塩酸グアニジニウム英語: guanidinium chloride)とは、グアニジン塩酸塩 GdmClGdnHClGuHClと略されることがある。主にタンパク質変性剤として利用される。

歴史的背景

塩化グアニジニウムとタンパク質の結合について初めて研究を行ったのはPetrunkinとPetrunkin(1927年、1928年)であった。彼らは塩化グアニジニウムと、ゼラチンから抽出し熱によって変性させたタンパク質との結合について研究を行った[2]。その後Greensteinによって1938年と1939年に初めて、グアニジンのハロゲン化物チオシアン酸塩の高い変性能が示された。そこでは、卵白アルブミンやその他のタンパク質に対して、様々なグアニジニウム塩濃度で、チオールの遊離として示された[2]

タンパク質変性剤としての利用

塩化グアニジニウムは強力なタンパク質変性剤の1つとして知られ、グアニジンチオシアン酸塩とともに、DNA精製などの用途で、タンパク質立体構造研究や含む幅広い生化学分野で利用されている。6Mの高濃度の塩化グアニジニウムでは、タンパク質の立体構造は完全に崩れ、無秩序ならせん構造を形成する。また、mM程度の低濃度の塩化グアニジニウムであっても、in vivoプリオン陽性の細胞を陰性にすることが知られている。これは、プリオン繊維の断片化や伝達に重要なHsp104(シャペロン)の機能を阻害するためである[3][4][5]

薬としての利用

以前はランバート・イートン症候群による筋力低下や易疲労感の治療に使われていたが、多くの副作用があり、副作用の少ない薬が新たに開発されているため、現在は推奨されていない。利用する場合はタブレットとして経口投与を行う。通常1日に体重1キログラムあたり10~15ミリグラムを3~4回に分けて投与し、副作用が現れるまで35ミリグラムまでゆっくりと増やしていく。副作用の程度は人によって様々であるため、投与量は厳密に管理されなければならない。副作用は軽度のもので下痢など消化器系の障害として表れ、この時点で投与量を抑えることが推奨される。重度のものでは消化器系に加え、神経系皮膚腎臓肝臓心臓など様々な部位に障害を伴う[6]

結晶構造

塩化グアニジニウムの結晶は単純斜方晶(直方晶)の空間群Pbcaに属する。グアニジニウムイオン(カチオン)と塩化物イオン(アニオン)が水素結合(NH…Cl)によって結合することで結晶を形成する[7]

脚注

  1. ^ Lide, David R. (1998). Handbook of Chemistry and Physics (87 ed.). Boca Raton, FL: CRC Press. pp. 3–296. ISBN 0-8493-0594-2 
  2. ^ a b Lapange, Savo (1978). “Physicochemical aspects of protein denaturation”. New York: Wiley. ISBN 0-471-03409-6.
  3. ^ Ferreira PC, Ness F, Edwards SR, Cox BS, Tuite MF (2001) “The elimination of the yeast [PSI+ prion by guanidine hydrochloride is the result of Hsp104 inactivation]". Mol Microbiol. 40 (6):1357-1369. DOI: 10.1046/j.1365-2958.2001.02478.x
  4. ^ Ness F, Ferreira P, Cox BS, Tuite MF (2002) “Guanidine hydrochloride inhibits the generation of prion "seeds" but not prion protein aggregation in yeast”. Mol. Cell. Biol. 22 (15):5593-5605. doi: 10.1128/MCB.22.15.5593-5605.2002
  5. ^ Eaglestone SS, Ruddock LW, Cox BS, Tuite MF (2000) “http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC26647/ Guanidine hydrochloride blocks a critical step in the propagation of the prion-like determinant [PSI(+)] of Saccharomyces cerevisiae]”. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 (1):240-244. doi: 10.1073/pnas.97.1.240
  6. ^ “FDA Professional Drug Information: Guanidine”. Drugs.com. Revised: 07/2012. [1]
  7. ^ Haas, D. J.; Harris, D. R.; Mills, H. H. (1965). "The crystal structure of guanidinium chloride". Acta. Crystallogr. 19: 676–679. doi:10.1107/S0365110X65004085

外部リンク




塩酸グアニジンと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「塩酸グアニジン」の関連用語

塩酸グアニジンのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



塩酸グアニジンのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
独立行政法人科学技術振興機構独立行政法人科学技術振興機構
All Rights Reserved, Copyright © Japan Science and Technology Agency
JabionJabion
Copyright (C) 2025 NII,NIG,TUS. All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの塩化グアニジニウム (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS