噴水や人より多き鳥の恋
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評 言 |
"Selected Haiku 英訳鷹羽狩行句集" Hoshino Tsunehiko & Adrian Pennington 翻訳(ふらんす堂2003年)から引いた。同時に掲載されている星野恒彦氏等の英訳も紹介すると、 a fountainmore than the people, the maiting birds となっている。前書きに「イギリスThe United Kingdom」とあるので、イギリス紀行中の句であろうと推測される。 イギリスにかぎらず、ヨーロッパには噴水をうまくとりいれた公園や建築物がけっこうあるが、おそらく作者もそうした庭園のうつくしさに感心したものとおもわれる。噴水の周りで恋を語っている恋人たちよりも、そこで同じように異性を呼んでさえずっている鳥たちのほうがおおいというのである。ヨーロッパによくある独特のロマンティクな情景を、的確に俳句の五七五のなかに表現した秀作である。 俳句が多言語化/世界化しているといわれてひさしいが、これに対する日本の俳人の側の関心は意外なほどたかくない。掲出句のような海外詠の成果も、俳句が多言語化している現況での重要な副産物のひとつである。鷹羽狩行の場合、国境をこえることで、その独特の叙情性が、より現代的な性格を獲得しているともいえる。むろん、こうした叙情的な文体は、ふりかえってみればすでに数十年前から狩行の俳句のなかに観察されるのであるが、しかし、それをとりわけ明瞭にさせているのが、ここでは実はその英訳の効果であり、また俳句の多言語化という文脈であることに注意すべきであろう。多言語俳句の時代は、よりおおきな文脈として、日本語で書かれた俳句の評価そのものにも影響をあたえる可能性もあるということである。 |
評 者 |
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備 考 |
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