咬合による差異
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/17 18:31 UTC 版)
ただし、歯槽側面角が大きい事のみが必ずしも出っ歯の原因ではない。現代人では、原始生活を営む種族は別として、出っ歯でない人でも上顎骨の切歯部が下顎骨よりやや前方に出ているので、上顎の歯列も下顎のそれより少し前方に位置しているのが普通である。上下の歯の咬み合わせが、いわば鋏の刃のようになっているので「鋏状咬合(きょうじょうこうごう)」と呼ぶ。このため、上顎の歯槽側面角が小さいと上の切歯が突出しやすくなり、下顎の切歯との間に大きな空隙ができて(オーバージェットが過大になって)出っ歯が起こりやすい。一方、現代の原始民族以外で、古代人例えば縄文時代人は比較的歯槽側面角が小さく、突顎で、上顎の歯槽が前突していたが、下顎の切歯と歯槽も前突し、上下の歯列が接合し、ちょうど毛抜きの先端が合うような形態であった。これを手術に用いる鉗子 に例え、「鉗子状咬合(かんしじょうこうごう)」と言う。この状態では、口吻部の前突はあるが出っ歯は起こり得ない。 歯の咬合形式の差異(藤田恒太郎による)民族・人種鉗子状咬合鋏状咬合その他不正咬合日本人 3% 87% 10% ドイツ人 17% 79% 4% 黒人 53% 41% 6% オーストラリア原住民 100% 0% 0% 出土した古人骨から判断すると、古人類は猿人から新人に至るまで突顎か正顎かにかかわらず全て鉗子状咬合である。鋏状咬合が出現した理由はよくわからないが、古人類は固く粗雑な食物を摂取しなければならなかったため、それに対応して強い咀嚼力を得るため鉗子状咬合であり、人類が農業を始め、柔らかい食物を摂取するようになって下顎が退化縮小して鋏状咬合に移行した可能性が考えられる。出っ歯は鋏状咬合と共に人類の進化の上ではごく新しい形質と言える。
※この「咬合による差異」の解説は、「出っ歯」の解説の一部です。
「咬合による差異」を含む「出っ歯」の記事については、「出っ歯」の概要を参照ください。
- 咬合による差異のページへのリンク