向き付け
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/31 09:19 UTC 版)
すべての局所座標系(英語版)(coordinate atlas)の変換函数が正のヤコビ行列式をもつとすると、多様体は向き付け可能となる。そのような座標の選び方のうち、最大のものが M の向き付けを定義する。M 上の体積形式 ω は、ユークリッド体積形式 d x 1 ∧ ⋯ ∧ d x n {\displaystyle dx^{1}\wedge \cdots \wedge dx^{n}} の正の値をかけたものへ ω を変換する局所座標系として、自然に向きを決める。 M 上の特別に選ばれた標構(英語版)(frames)も、体積形式は持っている。 ω ( X 1 , X 2 , … , X n ) > 0 {\displaystyle \omega (X_{1},X_{2},\dots ,X_{n})>0} であれば、接ベクトルの基底 (X1,...,Xn) が右手系である。 右手系のすべての標構の集まりは、正の行列式を持つ n 次元写像である一般線型群 GL+(n) による群作用である。それらは、M の線型標構バンドル(英語版)(linear frame bundle)の主 GL+(n) 部分バンドルを形成し、体積形式に付帯する向きは、M の標構バンドルから構造群 GL+(n) をもつ部分バンドルへの標準的なリダクションを与える。いわば、体積形式は M 上の GL+(n)-構造(英語版)(GL+(n)-構造を与える。さらに、リダクションは、 ω ( X 1 , X 2 , … , X n ) = 1 {\displaystyle \omega (X_{1},X_{2},\dots ,X_{n})=1} (1) をとる標構を考えることにより、一層明らかとなる。 このように、体積形式は SL(n)-構造を与える。逆に、SL(n)-構造が与えられると、特殊線型標構の式 (1) を導入することにより、体積形式を再現することができる。 多様体が向き付け可能であることと、体積形式をもつこととは同値である。実際、正の実数をスカラー計量として埋め込むと、GL+ = SL × R+ であるので、SL(n) → GL+(n) は変形レトラクト(deformation retract)である。このように、すべての GL+(n)-構造は、SL(n)-構造と GL+(n)-構造に帰着でき、M 上での向きは一致する。さらに具体的には、行列式バンドル Ω n ( M ) {\displaystyle \Omega ^{n}(M)} の自明性と向き付け可能性は同値であり、ラインバンドルが自明であることとどこでも 0 とならない切断を持っていることは同値である。従って、体積形式の存在は向き付け可能性と同値である。
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