可換環と可換体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/14 09:27 UTC 版)
可換環 A に対し、行列式 det: GL(A) → A* は E(A) 上で1となり、従って、写像 det: K1(A) → A* を誘導する。E(A) ◅ SL(A) より、特殊ホワイトヘッド群(special Whitehead group) SK1(A) := SL(A)/E(A) を定義することもできる。この写像は、写像 A* → GL(1, A) → K1(A) (左上の角での単元) を通して分解し、分裂短完全系列(split short exact sequence)を導く。 1 → S K 1 ( A ) → K 1 ( A ) → A ∗ → 1. {\displaystyle 1\to SK_{1}(A)\to K_{1}(A)\to A^{*}\to 1.} この式は、通常の特殊線形群を定義する分裂完全系列 1 → SL ( A ) → GL ( A ) → A ∗ → 1. {\displaystyle 1\to \operatorname {SL} (A)\to \operatorname {GL} (A)\to A^{*}\to 1.} の商である。行列式は、単元群 A* = GL1(A) が一般線形群 GL(A) に含まれることによって分裂し、従って、K1(A) は単元群と特殊ホワイトヘッド群の直和 K1(A) ≅ A* ⊕ SK1 (A) として分裂する。 A がユークリッド整域(例えば、体や整数環 Z )であるとき、SK1(A) は 0 となり、行列式写像は K1(A) から A∗ への同型である。このことは一般的な PID A に対しては誤りであり、全ての PID へは一般化できないユークリッド整域の性質という、数学的にまれな例となっている。SK1 が 0 でない明示的な PID は、1980年にアイシェベック(Ischebeck)に、1981年にグレイソン(Grayson)により与えられた。A がデデキント整域で、その商体が代数体(有理数体の有限拡大体)となる場合は、Milnor (1971, corollary 16.3) が、SK1(A)=0 となることを示した。 SK1 が 0 となることは、K1 が GL の中の GL1 の像により生成されたと解釈することができる。そうでない場合は、K1 が GL2 の像により生成されるかどうかが問題となる。デデキント整域の場合はこれは正しく、つまり、K1 が GL の中の GL1 と SL2 により生成される。SL2 により生成された SK1 の部分群はメニッケ記号(英語版)(Mennicke symbol)により研究することができる。極大イデアルによる剰余環がすべて有限体となるようなデデキント整域に対し、SK1 は捩れ群(torsion group)である。 非可換環に対し、行列式は一般には定義することができないが、写像 GL(A) → K1(A) は行列式の一般化である。
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