古ノルド語のケニングの実例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/08 02:27 UTC 版)
「ケニング」の記事における「古ノルド語のケニングの実例」の解説
剽窃詩人エイヴィンドによる下記の宮廷律(dróttkvætt)の詩句は、灰衣王ハーラルの貪欲さを、前王であるハーコン善王の寛大さと比較したものである。 Bárum, Ullr, of alla,ímunlauks, á haukafjöllum Fýrisvallafræ Hákonar ævi;nú hefr fólkstríðir Fróðafáglýjaðra þýjameldr í móður holdimellu dolgs of folginn—Eyvindr skáldaspillir、Lausavísa これを逐語訳すると以下の通りとなる。「戦ネギのウルよ! 我らはハーコンの治世の間ずっとフュリ河畔の種を鷹の山に抱えてきた。今や人々の敵は、そのフロージの不運な奴隷の小麦粉を、女巨人の敵の母の肉の中に隠してしまった」 このスタンザに含まれるケニングは以下の通りである。 戦ネギのウル(Ullr ... ímunlauks):「戦士」の意。ímun-laukr(戦-ネギ)自体もその形状から「剣」を意味するケニングである。Ullr(ウル)は神の名であり、慣習的に、神の名は、何らかの特徴を持つ人を指すために用いられ、ここでは「剣のウル」として「戦士」を表す。ここではハーラル王を指している。 鷹の山(hauka fjöllum):「腕」の意。hauka(鷹)とfjöll(山)からなるケニング。鷹狩りにおいて、鷹匠の腕に鷹が留まることへの連想から、場所を表す語と鷹の語の組み合わせは、慣習的に「腕」を表す。 フュリ河畔の種(Fýrisvalla fræ):「黄金」の意。Fýrisvellir(フュリ河の平原)とfræ(種)からなる。これは『詩語法』と『フロールヴ・クラキのサガ』にある伝説を参照したものである。フロールヴ王とその臣下たちは、追手を撒くため、ガムラ・ウプサラの南にあるフュリ河の流れる平原に黄金を撒き散らした。 フロージの不運な奴隷の小麦粉(Fróða fáglýjaðra þýja meldr):これも「黄金」の意である。『グロッティの歌』を参照したもの。 女巨人の敵の母の肉(móður hold mellu dolgs):「大地」「土」の意。大地の女神とされるヨルズは、巨人を打ち倒すトール神の母であることから。 したがって、つまるところこのスタンザは、「ハーラル王よ! 我らはハーコン王の治世の間ずっと黄金を腕に抱いてきた。今や人々の敵(たる汝、ハーラル)は、その金を土の中に隠してしまった」と解釈される。
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