原郷と拡散
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 19:59 UTC 版)
ツングース語族の原郷について、かつてはバイカル湖近くにあったとする説(Menges 1968、Khelimskii 1985)もあったが、最近は中国北東部やアムール川流域に求める見方が優勢である。 Janhunen 2012、Pevnov 2012は、紀元前500年から西暦500年頃に満州のどこかで話された共通祖語(ツングース祖語)からツングース諸語が拡散したと推定している。 アレキサンダー・ボビン(2015)は、ツングース語族北部語群にはツングース語族南部語群に見られないエスキモー・アレウト語族系の借用語があり、エスキモー・アレウト語がかつてはシベリア東部ではるかに広く話されていたことを示しているとし、2,000年前にツングース語族がアムール川の中流域の原郷から北方に広がっていき、それ以降にツングース語族北部語群にエスキモー・アレウト語からの借用語が入ったと推定している。 Wang and Robbeets (2020) は、ツングース祖語の原郷をハンカ湖地域に設定した。 Li et al (2020)は、ツングース祖族が紀元前3500年頃に中国東北部の遼西地域から内陸ルートで沿海州に雑穀を持ち込んだ農耕集団であったとし、この移住に伴い沿海州に先住していたニブフ祖族の一部はツングース語への言語交替を起こした可能性があるとしている。 Liu et al. (2020) は、ツングース語族話者を特徴付ける遺伝子として、Y染色体ハプログループC-F5484とその下位系統を特定し、これがツングース語族話者の誕生と各民族集団への分化を反映するとした。このタイプは3,300年前に誕生し、1,900年前から徐々に下位系統へ分化したと算出され、ツングース語族の誕生、分化のおよその年代が遺伝子から示されたことになる。
※この「原郷と拡散」の解説は、「ツングース語族」の解説の一部です。
「原郷と拡散」を含む「ツングース語族」の記事については、「ツングース語族」の概要を参照ください。
- 原郷と拡散のページへのリンク