原理・技法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/21 04:02 UTC 版)
ペーパー・ドライポイント(紙凹版画)については、日本の教材会社が1960年(昭和35年)頃、小学校の教材として原理を開発した。それは当時流行したが、現在は廃れている。また、専門の版画家が何人か試みたが、美術の領域までは高められず、単調な版画に過ぎなかった。しかし、井上が独自に開発した技法により、ぼかしや中間のトーンが出せるようになり、立体感や空間感といった高度な表現も可能になった。 ペーパー・ドライポイントの原版は、厚さ0.7mmの厚紙の片面を樹脂加工したものである。そのままではインキを吸わないが、カッター・ナイフで線を刻んだり、はぎ取ったりすると、紙の地肌が出て、インキを吸う。このように凹版と平板を併用したものといえる。木版画や銅版画との違いは、(1)非常に細い線が出せる、(2)幅広い黒のつぶしが、線やぼかしと同時に出せる、(3)ぼかしが可能、(4)すべて一版で出せるが、二版使うこともあるといったものである。 井上による工程は、まず下絵を描き、それをトレーシング・ペーパーに写し取る。原版の上にカーボン紙を置き、その上に、前述のトレーシング・ペーパーを裏返しで乗せ、線をなぞって原版に写し取る。その写し取った線をたよりに、カッター・ナイフで刻んだり、はぎ取ったりする。布のタンポで、原版にエッチングインキを塗り、別の布で拭いて、調子を整える。こうして、エッチング・プレスで、和紙に摺る。2枚目以降は、布のタンポで原版にエッチングインキを塗る作業から始めることになる。実際に摺ることができるのは10~20枚程度で、それ以降は原版が急速に衰える。
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