分類と発見の意義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/08 09:53 UTC 版)
クモガタ類 他のクモガタ類(非単系統群) 四肺類 †コスリイムシ 脚鬚類 ウデムシ 有鞭類 サソリモドキ ヤイトムシ †ウララネイダ類 クモ †キメララクネ科 キメララクネ パラキメララクネ 中疣類 後疣類 Wang et al. (2018) と Wunderlich (2019, 2020) に基づいたクモガタ類におけるキメララクネの系統的位置。 サソリモドキ。クモと同様に四肺類で、鞭状体をもつ現生クモガタ類の1例。 ウララネイダ類の Attercopus fimbriunguis の復原図 キメララクネが発見される以前では、かつて原始的なクモと考えられ、のちにクモの起源に近いのものと区別されるようになった化石クモガタ類はいくつかあり、主に Idmonarachne とウララネイダ類(Uraraneida)か挙げられる。これらのクモガタ類は疑いなくクモに近いもののクモとして認められないのは、不完全な糸疣しか持たないことと、化石証拠の不足により触肢器の有無も不明であることが主な原因となり、特にウララネイダ類は、クモとして異質であるサソリモドキのような鞭状体も備わっていた。このような尾節はクモとこれらのクモガタ類の共通祖先から受け継いだ祖先形質で、クモに至る系統で退化していたと考えられる。 基盤的な現生クモ中疣類のハラフシグモ属の側面図。尾節を欠くが、発達した背板(5)と糸疣(3と4)が見られる。 しかしキメララクネは前述のウララネイダ類のように鞭状の尾節をもつ同時に、クモとして最も重要な共有派生形質である触肢器と発達した糸疣を兼ね備えており、その糸疣と背板の形態も最も基盤的な現生クモである中疣類(ハラフシグモ類)を思わせる。そのため、キメララクネは現生クモと前述のクモガタ類を繋げたミッシングリンクとされ、クモに至る系統は尾節の退化以前で既に触肢器と発達した糸疣を進化したことを示し、従来のクモの定義を覆しかねないほどの情報を与えていた。クモは3億19万年前の石炭紀後期で既に他のクモガタ類と分岐していたため、1億年前の白亜紀に生息したキメララクネはクモの共通祖先ではなく、代わりにその祖先形質を2億年以上も色濃く受け継いだ基盤的な系統群の生き残りと考えられる。 キメララクネに対して最初の記載を行った Wang et al. (2018) と Huang et al. (2018) はいずれもキメララクネのクモとの深い関わりを認めるが、それ以降の分類、主にキメララクネはクモに含めるか否かについて意見が分かれており、前者はキメララクネをクモであると認め、後者はキメララクネをウララネイダ類と見なしている。従来のクモの定義は主に触肢器と発達した糸疣を有することに基づいたが、キメララクネの発見によって、尾節の有無もその基準の1つとして検討がなされている(尾節のあるクモはありえる、もしくは尾を欠くこともクモの定義の1つとなる)。例えば Wunderlich (2019, 2022) はクモそのものをキメララクネが所属するキメララクネ科(後述)と残り全てのクモを含んだ分類群と再定義させ、キメララクネ科をキメララクネ亜目(Chimerarachida)に含めて他のクモ区別させた。
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