傷害の意義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/02 05:53 UTC 版)
「傷害」とはどのような行為を意味するのかについて、身体の完全性を害することであるとする説(完全性毀損説)と、生理機能や健康状態を害することであるとする説(生理機能障害説)が対立している。 両説は、生理機能障害説が人の生理機能を害するような場合に限定するべきだとするのに対し、完全性毀損説が生理機能の障害はもとより、身体の外貌に重大な変化を生じさせたような場合にも傷害とするべきであるとする点で異なっている。具体的なケースでは、人の毛髪を切った場合に、完全性毀損説では傷害となり、生理機能障害説では傷害とならないという違いがある。判例には女性の頭髪を根元から切った事件に関して、直ちに健康状態の悪化をもたらすものではないと述べて傷害罪を否定し暴行罪の成立を認めたものがある(大判明治45年6月20日刑録18輯896頁)。 どちらの説に立った場合でも、めまいや吐き気を生じさせたときや、長い時間失神させたときには傷害と考えられる。 なお、傷害罪における「傷害」の意味と、強盗致傷罪や強姦致傷罪における「傷害」の意味は同じではなく、後者ではより重大なものに限るべきだとする学説もあるが、判例はこれを否定する立場に立つとされている。また、傷害罪の客体は人に限られる。動物に対しては器物損壊罪、動物愛護法違反が適用されることとなる。
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