便宜置籍
【英】: flag of convenience
略語: FOC
一般に、船舶の国籍を自国に登録しないで、税金その他の点で便宜を与えている国に登録することをいう。歴史は古く、重商主義時代の欧州にも類似例があるが、FOC という用語は 1952 年、OEEC(欧州経済協力機構:Organization for European Economic Cooperation)の報告のなかで用いられたのが最初である。船主が FOC を選択する理由としては、国による租税公課の違いもさることながら、自国籍船に自国籍船員の配乗を義務付けられていて、自国籍船員費が相対的に高水準の場合、あるいは、船舶設備に関する規定が厳しいといったことなどから、相対的に資本コストが高くなるといった点がある。FOC 船の実質船主の多くは先進海運国籍企業であり、先進海運国は概して国や海運組合による規制、制約が厳しく、その結果これらの船主は FOC を選択するようになった。すなわち、便宜置籍国に系列法人を設立して不経済船をその法人に売却し、賃金の安い外国人船員を配乗させたうえで再用船するという事例や、新造船を第三者ないしは系列法人に建造させて用船する事例が見受けられるようになった。便宜置籍船への傾斜については、国際金融資本の影響も見落とせない。第二次世界大戦後のギリシア船主によるリバティ船買入れ、さらには、その後のタンカー大型化時代の大量建造に対する米国内余剰ドル、ないしはその後のユーロ・ダラーの海運業への傾斜といった、いわゆる過剰流動性の時代における現象が、船主の FOC 選択を容易にしたことは否めない。1983 年央現在、タンカーの FOC 船は全世界で約 90 百万重量トンである。 |

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