低廉報酬問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 15:25 UTC 版)
国選弁護人の報酬が低廉に過ぎることが問題として指摘されている。 国選弁護人は私選弁護人と全く同様の責任を負うから、接見のための移動時間や待機時間、弁護方針の立案・検討時間などは私選弁護人と同様に必要となるし、自白事件(被疑者・被告人が犯罪事実を争わず、量刑のみが争点となる事件)であっても、情状証人の準備、被害弁償や示談交渉などの事務が必要となり、決して負担は軽くはない。しかし報酬基準は自白事件で被告人国選1件を通して活動しても8万円程度(被疑者国選から通して受任しても15万円程度)であり、これは上記のような負担を正当に反映していないと指摘される。さらに、弁護活動を充実させてもそれに見合う加算はなく、熱心に弁護活動を行えば行うほど割安になってしまう。このように、国選弁護事件は事実上弁護士の善意と経済的犠牲の上に成り立っているといえ、当事者主義的訴訟構造の元で当然確保されるべき検察官と被疑者・被告人の武器対等を害する原因にもなりうるし、人質司法が解消されない原因の一つになっているとの見方もある。 報酬が低廉に過ぎることは、他の業務で十分収入が確保できるようになった弁護士にとっては国選弁護人業務から撤退するのに十分な理由となるものであり、経験が蓄積されてきた中堅世代の弁護士を国選弁護人のなり手として確保するうえで障害となっている。
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