人類の起源と同属性の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 14:32 UTC 版)
「枢軸時代」の記事における「人類の起源と同属性の問題」の解説
人類は、一元的な起源をもつものなのか、それとも多元的な起源をもつものなのか。これについてヤスパースは、一元的発生説に有利な事実、もしくは多元的発生説に不利な事実がいくつかあると述べている。アメリカ大陸で古い人骨が発見されず、いわゆるアメリカ先住民(ネイティブ・アメリカン)はユーラシア大陸から氷期にベーリング海峡を渡った人びとの後裔であろうと考えられること、またあらゆる人種が相互に混血し、依然として生殖能力をそなえた人間を新しく生むこと、最も高等だとされる動物を例にとっても、人間を動物から引き離す距離は人種間の距離よりも遙かに大きいこと、これらはいずれも一元発生説に有利な証拠だといえる。しかし、われわれはこれを実験によって経験的に確かめたり、立証したりすることはできない。 より重要なことは、人間は互いに他を理解しあうことができるという事実であり、人間同士のつながりは、人間がそもそも意識や思考や精神であるがゆえに成立するものだということである。そこに人間同士の最も内密な親近性があり、他方人間を他の動物から区別する断絶がある。これは、いわば「同属性」の信仰であるが、この信仰とともに現実にも人類の統一を実現しようという意欲が生まれるのである。すなわち、ひとつの起源をもつがゆえにひとつの目標を描きうるというのがヤスパースの信念なのである。
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