人間の親子関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 02:56 UTC 版)
親子関係では、文化圏によっては、ことさら「血のつながり」つまり生物学的な要素が強調されることがあるが、これは実は必ずしも一般的というわけではなく、どの社会でも血のつながりがあればただちに社会的にも親子関係が発生するとされているわけではない。このことは社会人類学者のB.マリノフスキーらによって早くから指摘された。 例えば、トロブリアンド諸島の原住民は、(生物学上の)父親が果たす役割を知らない。だが、タマと呼ばれる男性が母親の親しい人であり、愛情をこめて自分たちを養育してくれる男親であり、いわゆる今日の父親像と本質的に異ならない。つまり彼らは父子間の血のつながりは認識しないが、社会的な父親の存在を認めているのである。 このような事実があるため、一般に(厳密には)《社会的な父親》と《自然的な父親(生物学的な父親)》が区別され、《社会的な父親》のことをpater ペーター、《生物学的な父親》はgenitor ジェニターと呼ばれている。 母と子の関係も、必ずしも子供は産んだ女性に愛着を示すわけではなく、養育活動と血のつながりは区別されると指摘されており、《社会的な母親》をmater マター、《自然的(生物学的)母親》をgenitrix ジェニトリックスと区別する余地があるという。英語では親であることを、biological parentage / non-biological parentage などと呼びわけることが行われている。 (社会的な親子関係の中には)継父と子の関係や継母と子の関係もある。ある子から見て母親が再婚する相手は継父(ママチチ)、父親が再婚する相手は継母(ママハハ)となる。結婚する人の視点で見ると、結婚相手にすでに子がいると、男性の場合は自身が継父となり、女性の場合は自身が継母となるわけであり、「継父 - 子」あるいは「継母 - 子」の関係を(時間をかけて)その子とともに構築してゆくことになる。 また最近では、人工授精や代理出産等も広く行われるようになっており、各国の古い民法が想定していなかったような新たな要素が加わり、従来は存在しなかったような「親」や「親子関係」が出現し、「親子」の概念も非常に複雑になってきている。
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