主張の発端
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/12/08 15:41 UTC 版)
標準的な宇宙論のモデルに従えば、宇宙マイクロ波背景放射を基準とした銀河団の運動速度は、全ての方向にランダムに分布しなければならない。ところが、WMAP (Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)の3年間の観測データの、キネティック・スニヤエフ・ゼルドビッチ効果(kinematic Sunyaev-Zel'dovich effect)を用いた解析により、アメリカ航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センター(GSFC)のAlexander Kashlinsky を中心とする、F. Atrio-Barandela、D. Kocevski及び H. Ebeling らの天文学者のグループはケンタウルス座とほ座の中間に位置する、差し渡し20°ほどの領域に向かって、「驚くほど均一な」("surprisingly coherent") 600–1000 km/s の銀河団の共通の運動 (フロー) が存在する証拠を発見したと発表した 。 Kashlinsky らは、この運動は、宇宙のインフレーションに先立つ、もはや観測不能となっている宇宙の領域の、影響の名残ではないかと示唆している。いかなる望遠鏡も、ビッグバン後、約38万年(宇宙の晴れ上がりにより宇宙が透明になった時期)より早い出来事を観測することができない。これは、約460億光年彼方にある宇宙光の地平面に対応する。この説では、銀河団の正味の運動を引き起こした原因は、この距離の外側に存在する。それはある意味では、我々の観測可能な宇宙の外側に存在するのであるが、しかし、同時に、我々の過去光円錐の中にも存在している。 Kashlinsky はこれらの計測結果は宇宙の定常的な流れが、決して統計的な見せ掛けの偶然ではないことを示していると主張し、「 現時点では、これが何なのか理解できるほど十分な情報を持っていない。我々が確信を持って言えるのは、この世界から極めて遠いどこかは、我々が局所的に理解している場所とは、極めて異なっているということだけである。それが別の宇宙であるか、あるいは時空の別の構造であるかは、まだ知ることができない。」と述べている。 この結論は、2008年10月20日に、アストロフィジカルジャーナル (Astrophysical Journal Letters) 誌上に発表され、オンラインで閲覧可能である 。 その後、著者たちは彼らの分析を、追加の銀河団と、その後リリースされたWMAPの5年間のデータに広げている。
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