ワラビ巻き
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/09 07:19 UTC 版)
リュウビンタイ類や薄嚢シダ類の大部分の若い葉は巻いている。この若い葉が先端部分を内側にして巻いた状態をワラビ巻き(蕨巻き、fiddlehead)と呼ぶ。ほとんどの被子植物や裸子植物、小葉植物やコケ植物の葉は何れもワラビ巻きにならないが、単葉の大葉シダ植物であるノキシノブ Lepisorus thunbergianus やアツイタ Elaphoglossum yoshinagae でもワラビ巻きを形成する。ゼンマイでは、ワラビ巻きが完成するのに5年かかり、葉原基の向軸側の葉軸の細胞数が背軸側よりも少ないことでワラビ巻きになっていることが分かっている。 ワラビ巻きは、葉の細胞における不均等な分裂活性の維持により形成される可能性があると考えられている。1型 KNOX 遺伝子は茎頂分裂組織の形成と維持に機能する遺伝子で、これが葉原基に過剰に発現することで葉原基が分化せずに茎頂分裂組織のように細胞分裂を維持することが原因であるかもしれないと指摘されている。トマトの2回羽状複葉で1型 KNOX 遺伝子を過剰に発現させると、3回羽状複葉や4回羽状複葉になり、若い葉はワラビ巻きになる。 また、モデル植物である薄嚢シダ類のリチャードミズワラビ Ceratopteris richardii からCrLFY1、CrLFY2と呼ばれる2遺伝子がクローニングされている。これは、シロイヌナズナ Arabidopis thaliana およびキンギョソウ Antirrhinum majus において花序分裂組織の側方に発生する分裂組織が花芽分裂組織としてのアイデンティティを獲得するプロセスにおいて働く転写因子として同定されたLEAFY/FLORICAULA をコードする LFY の相同遺伝子である。CrLFY1、CrLFY2のRNAブロットによる発現解析から、胞子体世代の栄養シュートと生殖シュートの茎頂に加え、ワラビ巻き状態の胞子葉でも発現していることが観察された。 被子植物でも例外的にワラビ巻き状の構造を形成することがあると知られており、キソケトン Chisochetonでは複葉が1 m程度になり、数ヶ月に亘り小葉を作り続ける。また、モウセンゴケやハエトリソウの若い葉においても、同様に向軸側に曲がってできる単葉を形成する。ドロソフィルム Drosophyllum では、背軸側にワラビ巻き状に巻く。
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