胞子体世代
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/07 14:40 UTC 版)
陸上植物は単相単世代型の隔膜形成体緑藻類とは違い、単複相世代交代型を進化させてきたため、その生活環には単相の配偶体だけでなく、複相の胞子体世代を持つようになった。この胞子体世代の発生を司る遺伝子系として、流用仮説と新生仮説の2つの仮説が提唱されていた。前者は配偶体世代の発生の遺伝子系の流用により胞子体世代の発生の仕組みが進化したとする仮説で、後者は胞子体世代で全く新しい発生の仕組みを獲得したとする仮説である。現在は研究が進み、実際にはどちらの仕組みも用いられていることが分かった。 例えば、新生の例としては次のようなものがある。被子植物のシロイヌナズナの LFY (LEAFY) 転写因子は、花器官形成遺伝子である MADS-box 遺伝子の転写を抑制し、花器官を形成する。対してコケ植物のヒメツリガネゴケは LFY 遺伝子と MADS-box 遺伝子のオルソログ遺伝子を持っているものの、 LFY は MADS-box 遺伝子を転写制御していない。そのため、 LFY が MADS-box 遺伝子を制御する遺伝子系はコケ植物が被子植物と分岐した後に、被子植物の系統で新生したことになる。 対して、胞子体のもつ根毛は配偶体の仮根の形成に用いられる遺伝子系の流用だと考えられている。被子植物の胞子体の根毛形成に用いられているのと似た遺伝子系はヒメツリガネゴケの配偶体の仮根形成に用いられている。そのため、被子植物と蘚類の共通祖先で用いられていたメカニズムが、ヒメツリガネゴケでは仮根形成に、被子植物では根毛形成に流用された可能性が高い。
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