ロジバン文法と述語論理との対応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 09:07 UTC 版)
「ロジバン」の記事における「ロジバン文法と述語論理との対応」の解説
ロジバンは述語論理を文法の基盤としている。上述の通り、ロジバン文法には自然言語の文法用語では間に合わない用語が多いものの、そのいくつかは述語論理の用語を借用することで比較的適切に解説できる。そのため、ロジバンの初学者向けの講座(英語・日本語にかかわらず)では、述語論理から借用した用語をロジバン独自の文法用語に一時的に充てていることが多い。しかし、ロジバンは述語論理を文法基盤としているだけであって、ロジバン自体が述語論理であるわけではない。そのため、安易にロジバン独自の文法用語と述語論理の用語を対応付けしないように注意は必要であるが、この対応を考えることによって得られる理解は少なくない。以下では、述語論理の知識を用いて、半ば比喩的にロジバン文法について簡単に見ていく。 述語論理では、命題は述語と項の2つの要素からなっている。述語はふつう、いくつの項をとるかが決まっており、態などの細かなニュアンスを無視すれば、その意味(つまり、その述語が項たちをどのように取り結ぶのか)は穴の空いた(つまり、自由変項を伴う)文で定義できる: N(x1) = 「x1 は男である。」 P(x1, x2) = 「x1 は x2 を愛する。」 ロジバンの呼ぶ place structure を最も短絡的に捉えれば、それはこの穴あき文のことと言える。すなわち、ロジバンでは各述語(になれる語)に穴あき文が1つ対応していると考えられる。 さて、ある2つの項をとる述語をF、定項をa, b とすると、 F(a, b) は命題となる。ロジバンの文法の基本的な部分は、述語論理のこの記述形式を自然言語ライクに書き換えたものとして捉えることができる。述語の取る項の順序を保持したまま並べ、その項の列のどこかに述語に相当する語を挟み込むことで命題(に相当する構造)となるようにする。上の例では、 a b F a F b のように記述できる。このことから、ロジバン文法の用語と述語論理の用語に次のような対応関係がみなされることが多い: bridi 命題(文) selbri 述語 sumti 項 以下では、ロジバン文法の諸要素の一部を比喩的に見ていく。 ロジバンには項の位置を明示するタグ(FA類)が用意されており、これを項の頭につけることで、項を place structure の順序則に縛られずに自由に並べることができる: fa a fe b F fe b F fa a F fe b fa a fe b fa a F SE類は、述語の前につけることで、項の位置を入れ替えることができる。 F(x, y) = se F(y,x) G(x, y, z) = te G(z, y, x) 冠詞 lo や le とその終止詞 ku は、述語を囲むことで、その述語の x1 に当てはまるようなものを指示する項を形成する。 lo N ku ≒ 「x は男である」の x に当てはまるようなもの = 男 [lo nanmu ku] le P ku ≒ 話者が特定している、「x は y を愛する」の x に当てはまるようなもの = あの(誰か/何かを)愛する人 [le prami ku] 述語によって、述語を修飾することができる。これによって形成される複合的な述語を tanru と呼ぶ。 赤い(x) = 「x は赤い」[xunre] 男(x) = 「x は男だ」[nanmu] 赤い 男(x) = 「x は赤と何らかの関係がある男だ」[xunre nanmu] 時制・相表現の最も基本的な手段は、述語の前に相応の機能語をつける方法である。ロジバンにおいて時制表現、相表現は完全にオプショナルであり、話者の自在に尽くす(たとえば、話している内容の時制が明らかならばわざわざ付ける必要はない)。 P(トム, ミク)=「トムはミクを愛する」[la .tom. ku prami la .mik. ku] pu P(トム, ミク) =「トムはミクを愛した」[la .tom. ku pu prami la .mik. ku] ba P(トム, ミク) =「トムはミクを愛するだろう」[la .tom. ku ba prami la .mik. ku] co'a P(トム, ミク) =「トムはミクを愛しはじめた」[la .tom. ku co'a prami la .mik. ku]
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