レイヤー (DTP)
(レイヤー機能 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/02/22 08:56 UTC 版)
レイヤー (Layer) とは、グラフィックソフトウェアなどに搭載されている、画像をセル画のように重ねて使うことができる機能のことである。レイヤとも呼ばれる。日本語では層、重ね合わせの意味である。Adobe PhotoshopやPainterなどの商用ソフトだけではなく、フリーのグラフィックソフトウェア(GIMPなど)にも搭載されているものがある。
概念
例えば、今2枚のガラスがあったとして、1枚目に「あ」、2枚目に「い」と描いたとしよう。この「あ」と描かれたガラスの上のちょうど良い位置に「い」と描かれたガラスを置けば、「あい」という文字列が完成する。このときのそれぞれのガラスがレイヤーである。
このとき、一枚目のみに「あい」と描いた場合、例えば「あ」を大きく描きたい、「い」をもっと右に移動したい、といった場合に各文字を消さなければならない。しかし、レイヤーを使えばそれぞれ「あ」レイヤーを拡大するだけ、「い」レイヤーを右に移動するだけで済む。このような単純な例では レイヤーを使うことにより受けられる恩恵は比較的小さいが、複数枚の写真をレイヤーとして重ねるような場合においては、それぞれのレイヤーを個別に編集可能であることが大きな意味を持つようになる。
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⇔ | ![]() |
レイヤーを使えば、レイヤーをD&Dで移動するだけで済む。 |
デメリット
レイヤーは使う枚数の分だけ余計にメモリを消費するので、枚数が極端に多くなるとメモリ不足を招くことがある。
合成オプション
不透明度
不透明度は、レイヤーごとに数値を設定する。通常は100%で、これを0%に近づけるほど設定レイヤーが透明に近づく(すなわち、下位のレイヤーが見えるようになる)。0%で全く見えなくなる。
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不透明度を使った合成 |
マスク
マスクは、レイヤーごとにモノクロ画像を設定し、レイヤーの一部(マスクが黒い部分)を隠すことができる。αチャンネルの一種だが、レイヤー自体のαチャンネルとは別個に設定できる。
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+ | ![]() |
× | ![]() |
= | ![]() |
元画像 | レイヤー | マスク | 結果 |
ラスタイメージのラスタマスクとベクタイメージのベクタマスクがあり、ソフトによっては共に備える。
描画モード
描画モード(ブレンドモード)は、レイヤーごとにいずれかから選択する。ピクセルを合成する際に、演算方法を変更するもの。乗算、スクリーン、オーバーレイなどのほかに、ソフトウェアごとに特有のモードが存在する。不透明度と組み合わせることによって様々な効果を出すことができる。それぞれのモードには「暗くなる」「黒と組み合わせると影のような色を表現できる」といったような特色があるが、モードを使いこなすには若干の慣れが必要である。
基本的な描画モードには以下のようなものがある。名称はソフトによって異なるものもあるが、Photoshop日本語版と英語版の名称を最初に記した。数式はC言語風擬似コードで、x が元画像の、y が合成するレイヤーの、RGB(など)それぞれの値を表す。
名称 | 数式 | 用途例 |
---|---|---|
通常 (normal)、標準 | y | 普通の重ね合わせ。 |
乗算 (multiple) | x*y | 影の合成。 |
スクリーン (screen) | 1-((1-x)*(1-y)) | ハイライトの合成。 |
オーバーレイ (overlay) | x<.5 ? 2*x*y : 1-2*((1-x)*(1-y)) | 模様の合成。 |
比較(暗) (darken) | min(x,y) | |
比較(明) (lighten) | max(x,y) | |
差の絶対値 (difference) | abs(x-y) | 違いの確認。 |
レイヤー機能があるフリーのグラフィックソフトウェア
関連項目
- CAD(同様のレイヤーの概念を持つ)
レイヤー機能
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/12 17:29 UTC 版)
Photoshopの「調整レイヤー」やClip Studio Paintの「トーンレイヤー」に相当する「フィルターレイヤー」の機能を持ち、画像を非破壊的に編集できる。 Photoshop系ソフトの「レイヤーグループ」に相当する「グループレイヤー」の機能を持つ。「グループレイヤー」の入れ子構造を取ることができ、特定のグループレイヤーにフィルターレイヤーでフィルター効果をかけることができる。この「グループレイヤー」に、Krita独自の機能である「クリッピングマスク」と「アルファ継承」を組み合わせて使うのが、Kritaで想定されたワークフローである。 2015年リリースのKrita 2.9でPhotoshop標準のPSDファイルのレイヤー形式との互換性を強化し、PSDの「レイヤースタイル」や「レイヤーグループ」に対応。しかしKritaの「グループレイヤー」はKrita独自の機能を持ち、Photoshop系ソフトの「レイヤーグループ」とは異なる実装であるため、完全な互換性は取れないし、取るつもりもない。KritaはAdobe社のクローズドなファイル形式であるPSD形式を置き換えるべく、オープンなファイル形式であるOpenRaster形式(ora形式)の策定を行っており、レイヤーを含んだ画像データを外部のソフトとやり取りする際はOpenRaster形式で保存することを勧めているが、OpenRaster形式に対応した有名ソフトはKritaとGIMPくらいであるため、あまり普及していない(KritaはPSDに弱いため、Photoshop系ソフトとやり取りする際はいったんora形式でGIMPに持ち込んでPSDに変換する裏技もある)。
※この「レイヤー機能」の解説は、「Krita」の解説の一部です。
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