ルックイースト政策とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 政治 > 政治活動 > 政策 > ルックイースト政策の意味・解説 

ルックイースト政策

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/16 07:50 UTC 版)

ルックイースト政策(ルックイーストせいさく、Look East Policy)もしくは東方政策(とうほうせいさく)とは、日本の近代化を手本としたマレーシア政策であり、輸出加工区に外国企業を誘致するというものである。

概要

もともとは、1981年7月16日にマレーシアの第4代首相に就任したマハティールが同年の12月15日に提言した内容がそのように呼ばれるようになった。

この提言に先立ち、ラザク政権での教育大臣時代にも、マハティールは日本の成功に関心を寄せていたが[1]、そのように彼が他国に範を求めた背景には、当時のマレーシアが抱えていた諸問題があった。

地元のマレー人を中国系・インド系住民より優遇するブミプトラ政策の導入後、マレー人の社会的地位が向上し、マレーシア国内の社会的安定が達成されるかに思われたが、マレー人が優先的に採用された公的機関では非能率と怠慢が横行し、またビジネス界に参入するようになったマレー人ビジネスマンのあいだでは過度の個人主義的、利己主義的な傾向が顕著になった。

また、1981年のマハティール首相就任後、旧宗主国であるイギリスとのあいだで留学生問題やビジネス問題でトラブルが発生し、にわかにマハティール政権とイギリスの関係は緊張していた。

これらの諸事情を背景にして、個人の利益より集団の利益を優先する日本の労働倫理に学び、過度の個人主義や道徳・倫理の荒廃をもたらす西欧的な価値観を修正すべきである、とする同年12月15日のマハティールの提言がなされたのである。ただし、集団主義や労働倫理の範を、国内の華人ではなく、外国の日本に模範を求めたのは、マレーシアに独特の人種問題が絡んでいたからだ、ともいわれている。

こうしたマハティールの提言から、マレーシア国内では日本に対する関心が高まることになり、人材育成の一環として日本への派遣留学が急増。また、これを好機とみた日本の建設業界のマレーシア進出ラッシュを呼び寄せることにもなった。やがてそれらの急激な日本企業の進出に対して、マレーシア国内で反発が強まり、マハティール自身もこれらを批判することになった。

その後、マハティールの首相在任期間中( - 2003年)、ときにジレンマを抱えながらも、日本からの経済支援、技術移転などを理由として、ルック・イースト政策は継続された。

しかし、近年は経済成長著しい中国や米国への留学が急増する一方で日本への留学は減少傾向にあり、毎年定員割れが続いている。背景には、マレーシアが経済発展していることや経済の低迷が続く日本が留学先としての魅力に乏しいことが理由とされる。また、ナジブ首相もルックイースト政策開始から30周年を記念するシンポジウムで、同政策の維持を確認しながらも省エネや医学といった日本が世界に先行する分野にターゲットを絞って留学生を送り出すとして、政策の転換も示している[2]

関連文献

  • マハティール・ビン・モハマド、高多理吉訳『マレー・ジレンマ』、勁草書房、1983年(Mahathir bin Mohamad, The Malay Dilemma, Asia Pacific Press, 1970)
  • 萩原宣之『マレーシア政治論 複合社会の政治力学』、弘文堂、1989年
  • 萩原宣之『ラーマンとマハティール ブミプトラの挑戦』(現代アジアの肖像14)、岩波書店、1996年

脚注

  1. ^ コトバンク/ブリタニカ国際大百科事典. “ルック・イースト政策”. 2017年10月10日閲覧。
  2. ^ NHKBS1 ワールドWaveトゥナイト 2012年10月10日放送

関連項目


ルック・イースト政策

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/02 11:57 UTC 版)

日本とマレーシアの関係」の記事における「ルック・イースト政策」の解説

詳細は「ルックイースト政策」を参照 「ルックイースト政策」は、1982年2月8日クアラルンプールヒルトン・ホテル行われた日本マレーシア経済協議会(MAJECA/JAMECA)第5回合同年次総会」において、第4代マレーシア首相マハティール・ビン・モハマドによって提唱され経済政策である。この政策1981年10月首相によって提唱された「バイ・ブリティッシュ・ラスト」政策に続くものである。 この政策では日本東洋大国とみなし、西洋先進国よりもこの国の勤労道徳政策など様々な先進産業と経済部門にならうことを模索した学生公務員産業技術行政および民間部門留学のために送られた。最大で15000人のマレーシア人がこの政策によって恩恵受けた思われており、現在マレーシア政府環境技術生物工学含めるよう政策変更することを模索している。

※この「ルック・イースト政策」の解説は、「日本とマレーシアの関係」の解説の一部です。
「ルック・イースト政策」を含む「日本とマレーシアの関係」の記事については、「日本とマレーシアの関係」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ルックイースト政策」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「ルックイースト政策」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



ルックイースト政策と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ルックイースト政策」の関連用語

ルックイースト政策のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ルックイースト政策のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのルックイースト政策 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの日本とマレーシアの関係 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS