リステリアの細胞内侵入
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/12 05:21 UTC 版)
「リステリア」の記事における「リステリアの細胞内侵入」の解説
リステリアは、感染した宿主の細胞内と細胞外の両方で増殖することが可能な、細胞内寄生体(通性細胞内寄生菌)の一種である。リステリアは、菌体表面にInlA(E-カドヘリンに対するアドヘシン)やInlB(Metなどに対するアドヘシン)を発現し、それらを介して腸上皮細胞や肝細胞などに付着する。菌体は細胞に比べると非常に小さいことから、この付着はあたかも細胞が菌を飲み込むような形になる。ファスナー機構と呼ばれるこのような様式のエンドサイトーシスにより菌は細胞内に取り込まれる。その後、リステリアはリステリオリジンOによりエンドソームに大きい孔をあけて脱出し細胞質内に侵入する。一方、リステリオリジンOはマクロファージなどの食細胞による殺菌機構(ファゴサイトーシス)から逃れる際にも利用される。 細胞質内に抜け出したリステリアは、栄養を吸収して分裂により急激に増殖する、また、宿主細胞の細胞骨格の一つ、マイクロフィラメントを形成するアクチンを利用して細胞質内を移動することが可能である。菌体の片端でアクチンを再構成して重合させて積み上げ、これを足場にする形で推進力を得る。菌が移動した跡にアクチンの繊維が残って彗星の尾やロケットのように見えるため、この現象はコメットテイル、アクチンロケットなどとも呼ばれる。アクチンロケットによる細胞質内の移動は、リステリア以外では赤痢菌およびリケッチアに見られる。また、感染した細胞内を移動するだけでなく、隣接する細胞にアクチンロケットを伸ばして貫入し、その細胞内に侵入して感染を広げることが可能である。
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