ヤーロウの実験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/07 15:45 UTC 版)
「ヤーロウ式ボイラー」の記事における「ヤーロウの実験」の解説
当時、既に水管ボイラーの動作は水管を連続的に水が流れるか否かにかかっており、しかもその流れはポンプではなく熱サイフォン効果によって産み出されなければならないことが認識されていた。 水管は、上部に設けられた蒸気ドラムと下部の水ドラムの間に取り付けられた多数の小径管であり、ウィリアム・フェアバーンの研究により水管の直径の重要性や小径管が大径管に比べていかに高い圧力に耐え得るかが明らかにされていた。ドラムは圧力に耐えるため頑丈な構造になっており、定期的に内部の検査・清掃を行うためマンホールが設けられていた。 水管中には火炉による加熱のために上昇流が生じており、それに見合う給水を行うためには過熱されないよう外付けにしたダウンカマー (下降管) が必要であると考えられていた。このため、ほとんどの水管ボイラーには蒸気ドラムと水ドラムを結ぶ外付けの大径管が取り付けられていた。この大径管は、その剛性や管にかかる圧力のために信頼性の面で問題を抱えていた。 これに対してアルフレッド・ヤーロウは有名な実験を行い、この仮定を否定した。ただし、彼がこの仮定を否定しうることを実験を通じて見出したのか、あるいは既に理論的に予測していたことを実験によって実証しただけなのかは明らかになっていない。 ヤーロウの実験装置は、U字管の両側にブンゼンバーナーを設けて加熱できるようし、U字の両腕を流量計を取り付けたタンクに繋げたものであった。流量計は簡素なものだったが、タンクを通る流れの方向の他、その強さがおおよそ分かるようになっていた。 U字の片側だけを加熱すると、予想通り加熱された水がその腕の中を上向きに流れた。 一方、反対側の腕も加熱した場合、当時は両側からの上昇流がぶつかり合って循環流が遅くなるか完全に止まると考えられていた。しかし、ヤーロウの実験では循環流は遅くなるどころかむしろ速くなり、流量が増加することが分かった。ヤーロウの実験により、管の加熱状態にある程度の非対称性がある場合には循環が止まることはなく、ダウンカマーを加熱することでむしろ流量が増え得ることが示されたのである。 ヤーロウは実験を繰り返し、U字管を水平面に対して浅い角度にした状態から始め、最後には全体を加圧下に置いてみた。どの場合も結果は変わらず、循環は維持されていた。 この結果を受けて、ヤーロウは外付けのダウンカマーを省略できると結論づけた。水は水管のうち火炉に近いものでは上向き、外側にあって火炉より遠いものでは下向きに流れることで熱サイフォン効果による循環流が生じていた。
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