マルセイユ・タロットの出現とオカルティズムの影響
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「マルセイユ版タロット」の記事における「マルセイユ・タロットの出現とオカルティズムの影響」の解説
フランス最古のものとして現存するタロットカードは、1557年のリヨンにてケイトリン・ジョフロイという人物によって作成されたものと見られている。このケイトリン・ジョフロイによるタロットのスートは、今日に見られるタロットのスートとは異なり、当時のトランプ(プレイングカード)のスートと共通する3種類が確認されているため、その絵柄のデザインとともに「マルセイユ版タロット」と直接共通する点は少ないとされている。歴史上遡ることのできる範囲において初めて「マルセイユ版タロット」の絵柄が確認されるのは、マルセイユではなく17世紀後半(1650年頃とされている)のパリにおいてである。ジャン・ノブレによって作成されたタロットカードが「マルセイユ版タロット」の絵柄をもつ最も古いデッキとして有力視されている。このデザインが、後にタロットカードのデザインとして一般的なものとなり、これを元にした様々なバリエーションのカードがフランス各地で生産されることとなった。それらがマルセイユ版と呼ばれるようになったのは20世紀に入ってからのことで、ニコラ・コンヴェルという18世紀のマルセイユのカードメイカーの作ったタロットを、1930年代にグリモー社が「マルセイユのタロット」の名で復刻したことに始まる。 一方、1854年のパリにおいて一人の人物が一冊の本を出版した。「エリファス・レヴィ」、本名「アルフォンス・ルイ・コンスタン」の書き記した『高等魔術の教理と祭儀』がそれである。やがてこの本に書かれたオカルティズムに基づく神秘思想は当時のパリを席巻することとなり、19世紀半ばから20世紀に至る魔術復興・オカルト思想を象徴する存在となった。同書はタロットについての解説書でもあったので、以後現代に至るまで世界各地でタロット解釈の解説書の定番の一冊とされてきた。この流れを受け、タロットにも神秘主義・カバラ思想に基づく解釈が取り入れられ、それまで製作されていたカードにも同書の解釈が当てはめられることとなった。やがてイギリスへと飛び火したタロットの神秘的解釈は、20世紀初頭の1910年、アーサー・エドワード・ウェイトによるタロットカード、すなわち黄金の夜明け団の教義に基づくカバラ思想・神秘的象徴をふんだんに取り入れた「ウェイト版タロット」として結実し、このデッキが出版されたのを皮切りに、世界中で神秘的解釈に依拠したタロットカードが製作されることとなった。 こうした流れの中、マルセイユ版タロットはその歴史、象徴体系の部分から様々な研究が進められており、一部では「マルセイユ版こそ、本来のタロットカードの姿である」といった主張が生まれるなど、他のタロットとの差別化を図ろうとする動きも出てきている。
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