マネタリー・ベースとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > ビジネス > 新語時事用語辞典 > マネタリー・ベースの意味・解説 

マネタリーベース

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/11 00:55 UTC 版)

アメリカ合衆国のマネタリーベース
ユーロのマネタリーベース

マネタリーベース: monetary base)とは、現金通貨と民間の金融機関中央銀行に預けた預金の合計のこと。

中央銀行通貨: central bank money)ともいい[1]、市中銀行通貨(: commercial bank money)と対になる概念で、それぞれ現金と預金に対応する。地域や分野によってはベースマネーbase money)、ハイパワードマネーhigh-powered money)やそれを翻訳した強力通貨、高権貨幣とも呼ばれる。

日本

日本の場合、現金通貨とは日本銀行券日本の硬貨の合計であり、中央銀行預け金は金融機関が保有している日銀当座預金残高がこれに当る。日本銀行の定義するマネタリーベースは日本銀行券発行高と貨幣流通高と日本銀行当座預金残高の3つを合計したものである[2]

マネーサプライとの関係

マネタリーベース × 貨幣乗数 = マネーサプライ[3]

マクロ経済学の教科書には、「マネタリーベースをほぼコントロール下におく中央銀行は、このコントロールによって、間接的にマネーサプライを調節することができる」と解説されている。マネタリーベースは政府が採用している金融政策を判断するためのひとつの経済指標と見なされている。[要出典]

ただし、中央銀行がマネタリーベースでマネーサプライを調節できるかについては昔から議論があり、はっきりした結論は出ていない。日本では1970年代に日本銀行と小宮隆太郎堀内昭義の間で論争になり、1990年代には日本銀行の翁邦雄経済学者岩田規久男の間で論争になった。

この論争は2010年代でも続いており、伊藤修はマネタリーベースとマネーサプライの比例関係が現実を反映していないと指摘した。マネーサプライはベースマネーの何倍かになるという「信用乗数論」は、初級教科書の説明であって、現実はそうならない。日本のバブル経済においても、投機によってマネーへの需要が増え、それに応じる形で銀行貸出が増えて、必要になったベースマネーを日銀が供給し支えたという関係であった。バブル崩壊後も、ベースマネーを増やしてもマネーサプライは増えなかったという事実があるとしている[4]

2003年4月から2019年3月までの日本銀行発表のマネタリーベースとマネーサプライの推移。青色は「マネタリーベース平均残高(MD01'MABS1AN11)」で、薄緑色は「M3/平/マネーストック(MD02'MAM1NAM3M3MO)」。

例えば、日本銀行はマネタリーベースを2012年11月の1,244,449億円から2014年11月の2,593,603億円へと約2.1倍へと増やしたが[5]、マネーサプライは11,263,838億円から11,996,857億円[6]へと6.5%しか増えていない[誰?]。2010年11月から2012年11月へかけては99兆1,866億円から124兆4,449億円へと25%増だが、その時のマネーサプライは1,078兆6,221億円から1,126兆3,838億円へと4.4%増である[誰?]

時期 マネタリーベース マネーサプライ 貨幣乗数
2010年11月 991,886 10,786,221 10.87
2012年11月 1,244,449(+25.4%) 11,263,838(+4.4%) 9.05
2014年11月 2,593,603(+108.4%) 11,996,857(+6.5%) 4.63
2016年11月 4,176,573(+61.0%) 12,738,390(+6.2%) 3.05

他方で、高橋洋一は、比例関係が成り立たなくても、マネタリーベースでマネーサプライがコントロールできると主張した。マネーストック=マネタリーベース×信用乗数であるが、信用乗数は変化する。仮に信用乗数が半分になった場合、マネタリーベースを2倍に増やせばよいとしている[3]

経済学者の原田泰は、政策金利とマネタリーベース・マネーサプライが連動すると論じた。1980年末、日銀による金利引き下げが急激なマネタリーベース・マネーサプライの急上昇をもたらし、1989年以降の金利引き上げがマネタリーベース・マネーサプライの急減をもたらしたとしている[7]。また、原田は物価とマネタリーベースの関係についても指摘した。物価とマネタリーベースは同じ動きをしている。2000-2007年では、ジンバブエのマネタリーベースは130万倍なのに対し、インフレ率は5倍の650万倍となっている。一方でチャドのマネタリーベースは2.8倍なのに対し、インフレ率は約半分の1.2倍となっている。マネタリーベースの伸び率が、両国のインフレ率の違いを生み出したとしている[8]

脚注

  1. ^ 日本銀行調査統計局 (2013年8月). “マネタリーベース統計のFAQ”. 日本銀行. 2016年12月17日閲覧。
  2. ^ マネタリーベースの解説 : 日本銀行 Bank of Japan
  3. ^ a b 田中秀臣編著『日本経済は復活するか』藤原書店、2013年、167-168頁。ISBN 9784894349421 
  4. ^ 伊藤修『日本の経済-歴史・現状・論点』中央公論新社、2007年、287-288頁。 ISBN 978-4-12-101896-0 
  5. ^ マネタリーベース:日本銀行 Bank of Japan
  6. ^ マネーストック:日本銀行 Bank of Japan
  7. ^ 原田泰『コンパクト日本経済論(コンパクト経済学ライブラリ)』新世社、2009年、80頁。 ISBN 9784883841325 
  8. ^ 原田泰, 大和総研『新社会人に効く日本経済入門』毎日新聞社、2009年、138頁。 ISBN 9784620530185 

関連項目


マネタリーベース

出典:『Wiktionary』 (2020/09/20 09:29 UTC 版)

語源

名詞

マネタリー ベース

  1. 現金通貨民間金融機関法定準備金合計

関連語


「マネタリーベース」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「マネタリー・ベース」の関連用語

マネタリー・ベースのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



マネタリー・ベースのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
新語時事用語辞典新語時事用語辞典
Copyright © 2025 新語時事用語辞典 All Rights Reserved.
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
マネーパートナーズマネーパートナーズ
Copyright © 2025MONEY PARTNERS CO,LTD All rights reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのマネタリーベース (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA) and/or GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblioに掲載されている「Wiktionary日本語版(日本語カテゴリ)」の記事は、Wiktionaryのマネタリーベース (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA)もしくはGNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS