ボード線図の利用例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/27 06:16 UTC 版)
図6と図7は、具体例を示している。3極増幅器について、図6は帰還のない場合の利得(開ループ利得) AOL と帰還のある利得(閉ループ利得) AFB をボード線図で示したものである。 この例では、低い周波数では AOL = 100 dB であり 1 / β = 58 dB である。低い周波数では AFB ≈ 58 dB である。 β AOL ではなく、開ループ利得 AOL をプロットしているので、AOL = 1 / β となる周波数が f0dB である。低い周波数では AOL が大きく、帰還利得は AFB ≈ 1 / β となる。従って f0dB は帰還利得と開ループ利得の線が交差する位置になる(f0dB は位相余裕を決定するのに必要となる)。 2つの利得が f0dB で交差する付近で、この例ではバルクハウゼン基準もほぼ満足されている。そのため帰還増幅器の利得には大きなピークが現れている(β AOL = -1 なら、これが無限大となる)。f0dB より大きい周波数では開ループ利得が十分小さくなるため AFB ? AOL となる。 図7は、同じ例の位相を示したものである。帰還増幅器の位相は、開ループ利得の位相が -180°となる周波数 f180 まではほぼ0である。その付近になると帰還増幅器の位相は急激に降下し、開ループ増幅器の位相とほぼ同じになる(AOL が小さいとき AFB ? AOL)。 図6と図7の印の付いている箇所を比較すると、単位利得周波数 f0dB と位相反転周波数 f180 は非常に近いことがわかる。具体的には f180 ≈ f0dB ≈ 3.332 kHz であり、位相余裕もゲイン余裕もほぼ0である。この増幅器は境界安定状態である。 図10: チェビシェフフィルタのゲイン線図をツールを使って描いたもの。伝達関数はグラフィカルに極や零点を追加することで定義できる。 図8と図9は、β が異なる設定のときのゲイン余裕と位相余裕を示している。帰還係数は図6および図7の場合よりも小さく設定されており、| β AOL | = 1 となる周波数が低くなっている。この例では、1 / β = 77 dB であり、低い周波数では AFB ? 77 dB である。 図8は利得(振幅)図である。図8から、1 / β と AOL の交差は f0dB = 1 kHz となることがわかる。AFB の f0dB 付近でのピークはほとんど目立たない(バターワース特性)。 図9は位相線図である。図8で得られた f0dB = 1 kHz を使うと、f0dB での開ループ位相は -135° であり、-180°との差である位相余裕は 45° となる。 図9によれば、位相が -180° となる周波数は f180 = 3.332 kHz である。図8から f180 での開ループ利得は 58dB であり、1 / β = 77 dB であるから、ゲイン余裕は 19dB となる。 一方、増幅器の応答特性には安定性以外にも重要なものがある。多くの場合、ステップ応答が重要となる。経験上、よいステップ応答には少なくとも 45° の位相余裕が必要とされ、70° 以上のものが望ましい。その場合、部品の特性のばらつきが重大な影響を与える。
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