ペロポネソスへの帰還
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/08 13:58 UTC 版)
ヘーラクレースの子孫であるヘーラクレイダイは、ミュケーナイ王エウリュステウスにペロポネソスを追放されて久しく、その末裔であるテーメノスはペロポネソスへの帰還を使命としていた。テーメノス、アリストデーモス、クレスポンテースは帰還する術をデルポイの神託に伺った。ところが返ってきたのは、祖先らが授かった神託と同じものであった。祖先たちはその神託に従ったのに、未だにペロポネソスへの帰還を果たせていない。テーメノスは怒って「父祖は神の告げたとおりにしたのに行動したのに死んでしまったではないか、なぜ同じお告げなのか」と非難した。すると神託は、彼らが死んだのは神託を正しく理解できなかったためであり、3度の収穫の後とは、3世代(ヒュロス、クレオダイオス、アリストマコス)の後という意味であり、狭き場所とは、コリントス地峡の西の細長い海(コリントス湾)のことであると告げた。そこでテーメノスはロクリス地方のナウパクトスで軍船を建造し海軍を組織した。 しかしナウパクトスにとどまっている間、ヘーラクレイダイに災難が降りかかった。彼らの前に神がかった予言者が現れて予言の言葉を叫んだが、ヘーラクレイダイは予言者をペロポネーソス側の人間の陰謀ではないかと疑って殺してしまった。すると建造した軍船はことごとく破壊され、兵も飢饉で離散してしまった。神託は災厄の原因は予言者の殺害にあり、殺害者を追放し、3つ眼の男を帰還の案内人とすることを告げた。そこでテーメノスはヒッポテースを追放し、3つ眼の男を探した。すると片眼の馬に乗ったオクシュロスに出会った。この男はゴルゲー(ヘーラクレースの妻デーイアネイラの姉妹)の子孫で、殺人の罪でエーリス地方に逃亡していた。テーメノスはオクシュロスが予言の男だと考え、ペロポネーソス半島へ案内を依頼した。 オクシュロスはコリントス地峡を通って陸路から帰還するのではなく、海を渡ってペロポネーソス半島に帰還することを勧め、海を渡るのに適したアイトーリアのモリュクリオンに案内した。ヘーラクレイダイはオクシュロスがエーリスを欲していることを知り、案内の返礼に、帰還を果たすことができたなら彼にエーリスを与えることを約束した。その後、オクシュロスの案内でペロポネーソス半島に帰還を果たすと、当時のミュケーナイ王ティーサメノス(オレステスとヘルミオネの子)との戦いに勝利し、殺したとも、追放したともいわれる。 後者の説によればヘーラクレイダイは、ラケダイモーンとアルゴスを支配していたティーサメノスと、メッセニア地方を支配していたネーレウスの子孫を追放したとされ、ティーサメノスはアカイア地方へ、ネーレウスの子孫はアテーナイへ去ったという。その後、テーメノスと、アリストデーモスの2子プロクレース、エウリュステネース、そしてクレスポンテースはどの土地を得るかをくじを引いて決め、テーメノスはアルゴスを、プロクレースとエウリュステネースはラケダイモーンを、クレスポンテースはメッセニアを得た。
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