ベヴァリッジ報告とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > ベヴァリッジ報告の意味・解説 

ベヴァリッジ報告書

(ベヴァリッジ報告 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/14 13:18 UTC 版)

ウィリアム・ベヴァリッジ

ベヴァリッジ報告書(ベヴァリッジほうこくしょ、Beveridge Report)は、ウィリアム・ベヴァリッジが示した社会保障制度拡充のための一連の報告書類。第二次世界大戦後のイギリスにおける社会保障制度の土台となった。正式名称は「社会保険と関連サービス」(Social Insurance and Allied Services)。

第二次世界大戦中の1941年、労働組合会議の請願を契機として省間委員会が組織され、国民健康保険制度などについての検討が行われた[1]。その検討に基づいて1942年11月に示されたものがベヴァリッジ報告である。報告の中で、健康保険失業給付年金などを、あらゆる国民がその対象になるような統一制度のもとで整備することが示された。この報告は国民の関心を強く集め、第二次世界大戦後における福祉国家への期待を高めることになった。

第二次世界大戦末の選挙において労働党が大勝し、アトリー労働党政権が成立したことは、この構想を実現へと向かわせた。1946年に国民保険法、国民保健サービス1948年国民扶助法英語版などが制定され、いわゆる「ゆりかごから墓場まで」といわれるような福祉国家への道を歩んでいった[2]

福祉レジーム

イギリスの福祉国家モデルを、イエスタ・エスピン=アンデルセン自由主義的福祉レジームに分類している[3]

ベヴァリッジは、報告書において以下を「5つの悪」とし、国家による社会保険制度を整備することでこれに対抗し、それが不可能な場合に備えて公的扶助を設けるとした[2]

  1. 窮乏 (want)
  2. 疾病 (disease)
  3. 無知 (ignorance)
  4. 不潔 (squalor)
  5. 怠惰 (idleness)

報告書はケインズ経済学の強い影響を受けているが、ベヴァリッジ自身は新古典派経済学に近い立場であった[2]。ベヴァリッジの目指すものは「完全な平等」ではなく、あくまでも最低限度(ナショナル・ミニマム)の保証であった[2]

脚注

  1. ^ 日本経済新聞社編 『やさしい経済学』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年。
  2. ^ a b c d 平岡公一『社会福祉学』有斐閣、2011年12月、113-119頁。ISBN 978-4-641-05376-2 
  3. ^ Esping-Andersen 1990; Ferragina and Seeleib-Kaiser, 2011

参考文献

  • 村岡健次ら編 『世界歴史大系 イギリス史3』 1991年、山川出版社
  • Jose Harris 著 (柏野健三訳) 『ウィリアム ベヴァリッジ その生涯(上・中・下)』1995・1997・1999年、ふくろう出版
  • 柏野健三 『英国社会福祉政策の発達』 2003年 ふくろう出版

関連項目

外部リンク


ベヴァリッジ報告

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/12 02:29 UTC 版)

社会保障」の記事における「ベヴァリッジ報告」の解説

ベヴァリッジ報告書」も参照 1929年米国ウォール街での株価大暴落契機として始まった世界大恐慌により、世界各国には大量失業者があふれ、社会不安増大したアメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトニューディール政策一環として1935年連邦社会保障法Social Security Act)を制定した社会保障という言葉はこのとき初め使われたが、この連邦社会保障法は、老齢年金失業保険障害者扶助母子衛生及び児童福祉事業等をその内容としており、必ずしも、今日使われているような社会保障意味するものではなかった。 社会保障という言葉が、国際的に本格的に使われるようになったのは、ベヴァリッジ報告以後である。イギリスでは、第二次世界大戦中1942年ウィリアム・ベヴァリッジが『社会保険関連サービス』と題したベヴァリッジ報告書提言しその後多くの国の社会保障発展大きく影響与えることになる。この報告では、社会保険制度中心とし、公的扶助関連サービス総合し、「ゆりかごから墓場まで」をスローガンにした社会保障計画提唱した戦後社会保障理想的体系ナショナル・ミニマム保証)を示したものであり、社会保険制度については均一拠出均一給付採用していた。

※この「ベヴァリッジ報告」の解説は、「社会保障」の解説の一部です。
「ベヴァリッジ報告」を含む「社会保障」の記事については、「社会保障」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ベヴァリッジ報告」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ベヴァリッジ報告」の関連用語

ベヴァリッジ報告のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ベヴァリッジ報告のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのベヴァリッジ報告書 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの社会保障 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS