フォリン酸救援療法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/31 05:40 UTC 版)
メトトレキサートはジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害薬である。すなわち、ジヒドロ葉酸がテトラヒドロ葉酸に還元されることを妨げることにより、核酸合成のde novo経路を阻害し、細胞の増殖を抑止するものである。フォリン酸救援療法とは、ある種の腫瘍に対してメトトレキサートを大量に投与する一方で少量のフォリン酸を投与すると、正常細胞はフォリン酸の作用によりメトトレキサートから「救援」され、腫瘍細胞が選択的に傷害されるというものである。 フォリン酸はテトラヒドロ葉酸の5-ホルミル誘導体である。フォリン酸は体内で容易にテトラヒドロ葉酸に代謝され、葉酸と同程度にビタミンとしての活性を発揮する。フォリン酸救援療法は、フォリン酸はジヒドロ葉酸レダクターゼの作用を受けずに活性化することから、古典的には、フォリン酸が葉酸の代わりに補酵素として用いられることがフォリン酸救援療法の基礎であると考えられていた。 しかし1980年代に、フォリン酸はメトトレキサートによるジヒドロ葉酸レダクターゼの阻害を解除することが報告された。詳細な機序は不明であるが、メトトレキサートやジヒドロ葉酸がポリグルタミル化されている場合にはフォリン酸による救援が行われないことが知られている。正常な細胞ではポリグルタミル化はあまり行われていないが、一部の腫瘍細胞では顕著なポリグルタミル化が行われており、このことがフォリン酸救援療法の基礎であると考えられるようになった。 臨床的には、メトトレキサート投与後に適切な間隔をあけてからフォリン酸が投与される。これにより骨髄や消化管粘膜上皮細胞がメトトレキサートの毒性から「救援」されることを期待するものである。メトトレキサートによる既存の腎傷害に対しては救援効果がないことが報告されている。 フォリン酸は厳密にはメトトレキサートの解毒剤とはいえないが、メトトレキサートの過剰投与に対する治療としては有効である。投与プロトコルは複数提唱されているが、いずれにせよメトトレキサートの血中濃度が5 x 10−8 M以下になるまでフォリン酸を反復投与する必要がある。 フォリン酸は経口的に投与することも、静脈内投与または筋内投与することもできる。
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