ヒトiPS細胞の樹立
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 17:13 UTC 版)
「人工多能性幹細胞」の記事における「ヒトiPS細胞の樹立」の解説
マウス(ハツカネズミ属)とヒト(ヒト属)は遺伝子レベルで多くの類似性があるものの、マウスES細胞とヒトES細胞とでは、培養法や発現している遺伝子の種類などにおいていくつか異なる点がある。マウスiPS細胞の成功を受けて、同様の手法がヒトへも応用可能であるか大きな関心が集まった。 山中ら京大グループは、マウスiPS細胞の樹立に用いた4遺伝子のヒト相同遺伝子であるOct3/4・Sox2・Klf4・c-Mycを、ヒト由来線維芽細胞(36歳女性の顔面の皮膚由来の線維芽細胞、69歳男性由来の滑膜細胞、および新生児包皮由来の線維芽細胞)に導入してヒトiPS細胞の樹立に成功した。また、世界で初めてヒトES細胞を樹立したことで知られるジェームズ・トムソン(英語版)らのグループも、山中らがマウスiPS細胞を初めて樹立した時と同じ戦略を用い、14個の候補遺伝子の中からOct3/4・Sox2・Nanog・Lin28の4遺伝子を選び出してヒトiPS細胞の樹立に別個に成功した。両グループの研究成果は、2007年11月20日、山中らの報告がセル誌に、トムソンらの報告がサイエンス誌にそれぞれ同日発表された。そのわずか後の12月には、ハーバード幹細胞研究所のジョージ・デイリー (George Daley) らのグループも、Oct3/4・Sox2・Klf4・c-Mycの4遺伝子にhTERT・SV40 large Tを加えた6遺伝子を用いてヒトiPS細胞の樹立に別個に成功しており、競争の激しさが窺える。この報告では、山中らやトムソンらが市販されている培養細胞を用いたのとは異なり、成人男性の手掌の皮膚から採取した細胞をもとにiPS細胞を樹立しており、実際にヒトの個体からiPS細胞を樹立可能であることが示された。
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