バンド計算における第一原理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/24 08:10 UTC 版)
「第一原理」の記事における「バンド計算における第一原理」の解説
バンド計算においても、“第一原理”の意味は、何ら実験結果に依らないことが前提である。つまり計算対象となる系の各構成元素の原子番号と、その構造(対称性)のみを入力パラメータとし、それ以外の一切のパラメーター調整や、実験結果を参照しないで、その系の電子状態を求められることを意味する。実はこれは厳密には正しくない(実情に即していない)。現在の第一原理バンド計算手法では少なくとも、計算対象となる系を構成する各元素の平衡格子定数が正しく求められるかを、実験結果を参照することによって検証している。バンド計算を使った研究による論文では、ほとんど例外なく系(またはその構成元素)の理論計算による平衡格子定数と、実験によって求められた平衡格子定数とを比較する表が載っている。 一方、局所密度近似 (LDA) やGGAのような近似の導入が、果たして第一原理の枠内であるかどうかに対しても異論がある(普通、物理学者の多くは、LDA、GGAは第一原理の範疇の中に収まると思っている)。 現実の第一原理バンド計算では、ゴーストバンドの問題や、基底関数の展開数の収束依存性、擬ポテンシャルにおけるトランスフェラビリティーの問題、局所密度近似の関数形の選択による結果への影響の差など、“恣意的”な調整と取られかねない部分が少なからず存在する。しかし、平衡格子定数のように実験としても既に“データブック”化したようなものでなく、実際に今行われている実験結果に合わせるようなパラメーター調整を、少なくとも第一原理バンド計算では行わない。 しかしながら、バンド計算を行うのも人であり、過去に実験側で非常に興味深い結果が発表された後に、その実験結果を支持する第一原理バンド計算の結果が複数発表される中、その拠って立つべき実験結果が実は誤りであったという例が存在する。
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