ドブソニアンの欠点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 08:32 UTC 版)
「ドブソニアン望遠鏡」の記事における「ドブソニアンの欠点」の解説
基本的に経緯台式架台なので、通常の経緯台式架台を持つ望遠鏡と同様の欠点を持つ。赤道儀式架台と異なり地球の自転に合わせて移動していく天体を容易に追跡するようなことができず、視野から天体が逃げていかないように数分ごとに2つの軸を使って望遠鏡本体を動かさねばならない。とくに天頂方向の天体を追跡することは非常に難しいものとなり、また高い倍率での観測も不向きである。これに伴って惑星や月のような明るい天体以外で天体写真の撮影に利用することにも向いていない。また、通常の望遠鏡は円形の鏡筒が架台の円形の筒で挟み込まれるようになっているため、接眼部分が天体を見やすい方向に向くように鏡筒の長軸方向に自由に回転させることができる。しかしドブソニアンでは通常、鏡筒と架台の間の自由度は高度方向の回転だけなのでこのようなことができず、接眼部分が望まない方向に向いてしまうこともある。現在では、こうした欠点を補うために、ドブソニアンの経緯台式架台を別途コンピュータ制御式の赤道儀式架台に搭載したものも一般的になっている。 従来のドブソニアンでは多少なりとも光学系や筐体の精密さを犠牲としているため、このことによる欠点も現れた。望遠鏡で歪(収差)のない像を得るには鏡やレンズの向きを精密に調整して軸(光軸)を観測前に合わせておくことが不可欠である。ドブソニアンは運搬することが多いために、光軸が狂いやすいが、鏡筒などの精密さを犠牲にしている分この光軸合わせの作業も難しいものとなった。 さらに、一般に望遠鏡は主鏡の各部分からやってくる光の波が強め合うことによって光を明るくする。もし主鏡の精度が正確なパラボラ面から光の波長の1/4以上 (0.1 – 0.2 μm) もずれてしまうと、ずれた光の波同士はかえって打ち消しあうことになり、主鏡の精度を犠牲にしすぎれば実際には大口径にする意味が失われてしまうことになった。ドブソニアンは鏡筒をコンパクトにするためもあり、短い焦点距離をもつ主鏡が用いられることが多いが、こうした短焦点の鏡はむしろより精度が必要とされる。現在では、主鏡で1/8λの面精度をもった鏡を高精度で調整できる製品が登場している。
※この「ドブソニアンの欠点」の解説は、「ドブソニアン望遠鏡」の解説の一部です。
「ドブソニアンの欠点」を含む「ドブソニアン望遠鏡」の記事については、「ドブソニアン望遠鏡」の概要を参照ください。
- ドブソニアンの欠点のページへのリンク