ドパミントランスポーターシンチグラフィー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/08 11:28 UTC 版)
「シンチグラフィ」の記事における「ドパミントランスポーターシンチグラフィー」の解説
ドパミントランスポーター(DAT)は神経終末の細胞膜に存在する細胞膜型トランスポーターで、他のモノアミントランスポーターなどとともにSLC6(soluble carrier6)とよばれる遺伝子ファミリーを形成している。ドパミントランスポーターは主に黒質線条体ドパミン終末部が存在する尾状核および被殻に発現している。黒質線条体ドパミン神経終末から放出されたドパミンを速やかに再取込しシナプス伝達を終結させるとともに、神経伝達物質の過剰作用から神経細胞を保護する役割をもつ。イオフルパン(123I-FP-CIT)はコカイン類似物質でありDATに高い結合親和性をもつ。イオフルパンを用いたDAT SPECTは黒質ドパミン神経脱落の有無、程度を正確に示す検査となる。すなわちパーキンソン症候群を示す疾患のうち黒質ドパミン細胞が脱落する疾患(パーキンソン病や多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、レビー小体型認知症)とドパミン細胞脱落を伴わない血管性パーキンソン症候群や薬剤性パーキンソン症候群、アルツハイマー型認知症を鑑別することができる検査である。またドパミン神経障害の進行を経時的に評価することも可能である。 検査の注意点 イオフルパンはエタノールを5%含むため飲酒に対し強い反応を示す患者には注意が必要である。パーキンソン病治療薬は検査時に休薬の必要はない。SSRIは線条体におけるDATの結合を10%ほど上昇させる可能性があるため注意が必要である。SSRIは可能ならば5~7日程の休薬をして検査することが望ましい。DATに結合して再取り込みを阻害するコカイン、アンフェタミン、メチルフェニデート、モダフィニルはイオフルパンのDAT結合を強く低下させる。マジンドール、フェンタニル、ケタミンもイオフルパンのDAT結合を低下させることがある。 重要な疾患 パーキンソン病では運動症状発現の5~10年前からDAT減少が始まっており、DATが正常の半分になると運動症状が出現する。パーキンソン病初期と専門医に診断された症例でDAT SPECTでドパミントランスポーターの低下が認められない場合はSWEDDsの可能性がある。ドパミントランスポーターの低下が認められるが、自律神経障害や初期から易転倒性やすくみが目立つなど多系統萎縮症や進行性核上性麻痺を示唆する所見がある場合はMIBGシンチグラフィーにて鑑別するべきである。
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