チロシンキナーゼ阻害剤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/02 01:33 UTC 版)
「分子標的治療」の記事における「チロシンキナーゼ阻害剤」の解説
ゲフィチニブ(Gefitinib、イレッサ) 上皮成長因子受容体 (EGFR) チロシンキナーゼ阻害剤 (EGFR-TKI) であり、非小細胞肺癌の治療に使用される。 エルロチニブ(Erlotinib、タルセバ) ゲフィチニブと同様EGFR-TKIであり、非小細胞肺癌の治療に使用される。 オシメルチニブ(Osimertinib、タグリッソ) EGFR T790M 変異陽性(EGFR-TKI耐性)の非小細胞肺癌に有効なEGFR-TKIである。 アファチニブ(Afatinib、ジオトリフ) 上記のEGFR-TKIと同様の作用機序であるが、EGFRのチロシンキナーゼドメインのATP結合部位に共有結合して不可逆的に阻害する。 ダコミチニブ(Vizimpro、ビジンプロ) ダコミチニブは、上皮細胞増殖因子受容体 (EGFR, HER 1, ErbB 1)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体HER 2 (ErbB 2) およびHER 4 (ErbB 4) のチロシンキナーゼ活性を不可逆的に阻害するチロシンキナーゼ阻害剤である。ErbB受容体ファミリー (EGFR、HER 2、HER 3ならびにHER 4) が形成するホモおよびヘテロダイマーによるシグナル伝達を不可逆的に阻害する。HERファミリーのATP結合部位においてATP結合ポケットのシステイン残基と共有結合する。HER 3はキナーゼ活性を持たずダコミチニブは結合しないが、他のファミリーと形成したヘテロダイマーに作用する。 イマチニブ(Imatinib、グリベック) Bcr-AblチロシンキナーゼおよびKITチロシンキナーゼ阻害剤であり、慢性骨髄性白血病、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病 (Ph+ALL)、消化管間質腫瘍(GIST)の治療に使用される。 ダサチニブ(Dasatinib、スプリセル) Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤でありイマチニブ抵抗性の慢性骨髄性白血病、再発または難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病 (Ph+ALL) の治療に使用される。 ポナチニブ(Ponatinib、アイクルシグ) Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤であるが、t315i変異による薬剤耐性があっても有効に設計されている。 ボスチニブ(Bosutinib、ボシュリフ) Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤であるが、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブとは異なる構造状態のチロシンキナーゼを阻害するために、他剤耐性の慢性骨髄性白血病に奏効する可能性がある。前治療薬に抵抗性または不耐容の慢性骨髄性白血病の治療に使用される。 バンデタニブ(Vandetanib、ZD6474、カプレルサ) 血管内皮細胞増殖因子受容体 (VEGFR)、上皮成長因子受容体 (EGFR)、RETチロシンキナーゼを阻害する。非小細胞肺癌に対し、臨床試験が進行中である。 スニチニブ(Sunitinib、SU11248、スーテント) 血小板由来増殖因子受容体 (PDGFR) キナーゼ、血管内皮細胞増殖因子受容体 (VEGFR) キナーゼ、KITキナーゼを阻害する。GIST、腎細胞癌、膵神経内分泌腫瘍の治療に使用される。 アキシチニブ(Axitinib、インライタ) VEGFR1、2、3、PDGFR、c-KITを阻害する。腎細胞癌の治療に用いられる。 パゾパニブ(Pazopanib、ヴォトリエント) VEGFR1、2、3、PDGFR-α、β、c-Kitに対して阻害作用を示す経口のマルチキナーゼ阻害薬である。腎細胞癌と悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)に用いられる。 レンバチニブ(Lenvatinib、E7080、レンビマ) VEGFR、FGFR、PDGFRα、KIT、RET等のチロシンキナーゼ阻害薬で、甲状腺癌に対して承認されているほか、肝細胞癌に対して第III相臨床試験が実施されている。また、悪性黒色腫での開発が進められている。 ラパチニブ(Lapatinib、GW572016、タイケルブ) 上皮成長因子受容体 (EGFR) とHer2/neuの双方を阻害する二重チロシンキナーゼ阻害剤であり、HER2過剰発現乳癌に対し使用される。 ニンテダニブ(Nintedanib、オフェブ) VEGFR、FGFR、PDGFRに作用する。特発性肺線維症の治療に用いられる。 ニロチニブ(Nilotinib、タシグナ) Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤でありイマチニブ抵抗性の慢性骨髄性白血病 (CML) の治療に使用される。 イブルチニブ (Ibrutinib) ブルトン型チロシンキナーゼ (BTK) 阻害薬で、慢性リンパ性白血病および小リンパ球性リンパ腫に用いられる。
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