チャイコフスキー自身による第4楽章の改訂
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「交響曲第5番 (チャイコフスキー)」の記事における「チャイコフスキー自身による第4楽章の改訂」の解説
前述のとおり、チャイコフスキー自身は一時期、交響曲第5番に不満を持っており、特に第4楽章についてはシンバルの追加を望み、ハンブルク初演では自らカットした楽譜により演奏した。ただし、チャイコフスキーはハンブルク初演以降に同曲を指揮することはなく、ハンブルクで使った楽譜も失われてしまっているため、チャイコフスキーにとっての最終稿がどのようなものだったのかは不明である。 20世紀前半の指揮者ウィレム・メンゲルベルクが演奏する交響曲第5番の第4楽章は、カットおよびコーダでのシンバル追加が行われており、メンゲルベルクは、チャイコフスキーの弟モデストを通じて作曲者が望んでいた作品の姿を知っていたと主張している。 メンゲルベルクが書き残したモデストとのいきさつについては時系列などに不正確な点が多いが、交響曲第5番の校訂を行った音楽学者クリストフ・フラム(Christoph Flamm)は、メンゲルベルクが1908年5月にローマで交響曲第5番を演奏した時にモデストに会っており、この時にチャイコフスキーの意図を伝え聞いていた可能性があるとして、メンゲルベルクが行った楽譜の改変はチャイコフスキーによるハンブルク最終稿(final Hamburg version)を参考にしていることにはほぼ疑いがないと結論づけている。 フラムが校訂した交響曲第5番のスコアは、2018年にドイツのブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版されており、第4楽章については以下のようなメンゲルベルクの改変が反映されている。 第210小節の1拍目(裏拍)から第316小節の1拍目(表拍)までのカット。展開部の大部分と再現部の最初がカットされる。 第469小節から第471小節までの和音の変更。コーダに入る直前の和音はホ長調の属和音(ロ、嬰ニ、嬰ヘ)であるが、これに7度音のイ音を加えて属七の和音とし、さらにオーケストレーションも変更している。チャイコフスキーの日記には、ハンブルクの演奏に向けてカットと「パート譜の修正」も行っているという記録があるため、校訂者は単なるカットだけではなかったとしている。なお、この部分は従来の楽譜と併記されている。 第472小節から第489小節までのカット。全休止の後、いきなりトランペットによるホ長調の「運命の主題」からコーダを始めるものである。 第502小節の1拍目にシンバル1発(八分音符)の追加。ただし、音符は括弧で囲まれ、シンバルの追加は任意( ad libidum )とされている。
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