タンパク質の核内輸送
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/25 03:51 UTC 版)
詳細は「核局在化配列」を参照 核局在化シグナル/配列 (nuclear localization signal/seuence, NLS) が露出している積み荷タンパク質は、迅速かつ効率的に孔を通って目的地へ送られる。NLSの配列はいくつか知られており、一般的には PKKKRKV のような塩基性残基からなる保存された配列を含んでいる。NLSを有する物質はインポーチンによって核へ取り込まれる。 NLSを持つタンパク質の輸送の典型的なスキームは、まずインポーチンαがNLS配列に結合することから始まる。インポーチンαはインポーチンβが結合するためのブリッジとして機能する。インポーチンβ-インポーチンα-積み荷タンパク質複合体は核膜孔を通過して拡散する。いったん複合体が核内へ入ると、GTP結合型Ran (Ran-GTP) がインポーチンβに結合し、インポーチンβを複合体から解離させる。その後、cellular apoptosis susceptibility protein (CAS) という核内でRan-GTPと結合するエクスポーチンがインポーチンαを積み荷タンパク質から解離させる。インポーチンβ-RanGTP複合体とインポーチンα-CAS-RanGTP複合体は拡散によって細胞質へ送り返される。細胞質ではRanに結合したGTPがGDPへ加水分解され、それに伴ってインポーチンβとインポーチンαが解離し、新たなNLSタンパク質の輸送のラウンドが可能になる。 積み荷タンパク質はシャペロンタンパク質の助けを借りて孔を通過するが、孔の通過自体はエネルギー依存的ではない。しかし、核内輸送サイクル全体としては、2分子のGTPの加水分解が必要であり、エネルギー依存的な能動輸送であると見なされる。核内輸送のサイクルは、RanGTPの核-細胞質間濃度勾配によって駆動される。この勾配は、Ran分子のGDPをGTPに交換するタンパク質であるRanGEFが核のみに局在していることで形成される。RanGEFの局在のために、核内のRan-GTPの濃度は細胞質と比較して高くなっている。
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