スヴェンド・クライナー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 05:08 UTC 版)
「OECD生徒の学習到達度調査」の記事における「スヴェンド・クライナー」の解説
コペンハーゲン大学の統計学者スヴェンド・クライナーは、ラッシュモデルを作ったデンマークの数学者ゲオルク・ラッシュの門下生であり、40年間ラッシュに協力しており、ラッシュモデルの利点と欠点については正確に理解していた。だからこそPISAの問題点を批判しているという。クライナーによれば、ラッシュモデルを有効に使用するには、質問がすべての参加国でまったく同じように機能する必要があり、質問が国によって難易度が異なる場合、つまり技術的に機能の違い(DIF)がある場合は、ラッシュモデルを使うべきではないという。クライナーは、とりわけPISAの読解力テストはまったく信頼できず、デンマークの子供にとってのデンマーク語と、中国の子供にとっての中国語の難易度が同一であるという想定には矛盾があり、言語の違いと文化の違いの両方が難易度に影響を与えるだめ、PISAでは違う国でまったく同じように機能する質問はなかったと言う。クライナーの2010年のラッシュモデルによるPISAデータ分析では、質問によって国のランキングが大きく異なり、異なる国でまったく同じように機能する項目は発見できず、ラッシュモデルを適切に機能させるには変数が大きすぎることが分かった。したがって、OECDの説明は不適切で、PISAはまったく信頼できないことがあらためてわかった。クライナーは、ラッシュモデルの特性からいってPISAによる調査は無意味であるが、PISAの問題はモデル適用の間違いだけでなく、それを批判したり質問に対して話し合いをする姿勢がないことがさらに根本的な問題であり、PISA主催者が批判的な教育学者との対話を避けるのは、自分を守ることができないからだろうという。 OECDの技術顧問レイ・アダムスは、クライナーの研究は、小グループの質問の分析にのみ基づいていると反論し、PISAスタッフは母数が大規模なデータであれば、変数が均等になると主張した。 しかし、アダムスに対してクライナーは再反論し、PISAスタッフが使用した同じグループで計算した結果、使用された質問のグループによって国の順位に大きなばらつきが見られたため、「ラッシュモデルはPISAに適していない。PISAランキングについて言えることは、それらが役に立たないということだけだ」「悪いモデルを使用する理由はない」と述べた。 OECD教育局長のマイケル・デヴィッドソンは、 「すべての質問がまったく同じように機能することを期待するのはばかげている。変数を最小化することで対処されるべきだ。」と反論した。 2011年、スヴェンドクライナーの批判に対して、OECD教育副局長A・シュライヒャーは、モデルは常に現実の近似であり、問題は、結果の歪みがないようにモデルが現実に適合しているかどうかであり、PISAは有効であると擁護した。ただし、シュライヒャーもPISAの誤差が大きいので、ランキングに過度に注意すべきではないと言っている。
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