スピーヌムとは? わかりやすく解説

スピーヌム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/18 15:34 UTC 版)

スピーヌムラテン語: supinum)は、準動詞の一種。主にラテン語の文法で使われる用語だが、他の言語の同様の機能をさすこともある。運動をあらわす動詞を修飾して「……するために」という副詞的な意味を表し、目的分詞と呼ばれることもある[1]

ラテン語

「スピーヌム」とは「寄りかかるもの」という意味で、他の語を修飾するのに用いられるためにこの名がある。

ラテン語のスピーヌムは、一見すると受動完了分詞と同形のようであるが、受動完了分詞が歴史的に接尾辞 -to のついた形である(したがって第一・第二変化の形容詞として変化する)のに対し、スピーヌムは抽象名詞を作る接尾辞 -tu がついた形であり[2]、第四変化に従う。ただし、実際に使われる形は対格の -tum と与格または奪格の -tū の2形だけである。前者を第一スピーヌム、後者を第二スピーヌムと呼ぶことがある。

-tum で終わる形は、運動をあらわす動詞を修飾して、その運動の目的を示す。

  • venatum ire (狩りに行く)
  • salutatum venit (彼はあいさつに来た)

-tū で終わる形は、評価をあらわす形容詞を修飾して、「……するについて」という意味を表す。

  • incredibile dictu (言うのも信じられない)

古典ラテン語では以上のように限定的な表現でのみ用いられるが、それ以前の古ラテン語プラウトゥスなど)には、これ以外の形も用いられた[3][2]

-tum で終わる形に eo(行く)の受動態不定法である iri を組み合わせたものを受動態未来の不定法(「……されようとすること」)の代わりに用いることもあったが、あまり多く用いられる形式ではなかった[2]

ラテン語のほとんどの動詞は、現在形・不定法のほかに、完了と受動完了分詞の形を知れば、あとは規則的にすべての活用形を導きだすことができるが、一部の辞書では受動完了分詞のかわりにスピーヌムを示すことがある。例えば venio (来る)の見出しは、věnio, vēni, ventum のように示される[4]。これは自動詞に受動完了分詞がないためである。

他の言語

ラテン語とおなじように接尾辞 -tu をつけた形の対格によって運動の動詞の目的を表すことは、サンスクリットバルト語派スラブ語派の言語にも見られる[3]

脚注

  1. ^ たとえば木村 (1985) p.135
  2. ^ a b c Palmer (1954) pp.324-325
  3. ^ a b 高津 (1954) p.179
  4. ^ Lewis, Charlton T; Short, Charles (1879). A Latin Dictionary. Oxford: Clarendon Press 

参考文献


スピーヌム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/04 13:47 UTC 版)

ラテン語の動詞」の記事における「スピーヌム」の解説

スピーヌムは主要部分4番目に当たる。その語形変化男性名詞第4格変化似ている。スピーヌムは対格奪格のみをとる。 詳しくは、スピーヌム、Latin supine (en)も参照のこと。 対格語尾が–umとなり、動作動詞とともに用いて目的を表す。動作動詞は、実質上、ほぼīre「行く」("to go")やvenīre「来る」("to come")などに限定される必要に応じて目的語を伴うことができる。Pater līberōs suōs laudātum vēnit. – 「父は自分の子供たちを褒めに来た」("The father came to praise his children") 奪格語尾が–ūとなり、「特定の奪格」(=物事特定するための奪格ablative of specification)として用いられるArma haec facillima laudātū erant. – 「これらの武器は最も称賛されやすかった」("These arms were the easiest to praise") スピーヌムlaudāreterrērepeterecapereaudīre対格laudātum territum petītum captum audītum 奪格laudātū territū petītū captū audītū

※この「スピーヌム」の解説は、「ラテン語の動詞」の解説の一部です。
「スピーヌム」を含む「ラテン語の動詞」の記事については、「ラテン語の動詞」の概要を参照ください。

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スピーヌム

出典:『Wiktionary』 (2020/12/03 06:09 UTC 版)

名詞

スピーヌム表記のゆれ:スピヌム

  1. ラテン語文法ラテン語:supinumの音写目的分詞
  2. スウェーデン語文法完了分詞

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