スエヒロタケ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/24 16:16 UTC 版)
スエヒロタケ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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![]() Schizophyllum commune
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Schizophyllum commune Fr. (1815)[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
スエヒロタケ (末広茸) | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Split Gill | ||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||
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スエヒロタケ (末広茸、学名: Schizophyllum commune)は、スエヒロタケ科スエヒロタケ属の小型のキノコ(菌類)。世界でも最も一般的なキノコの一つであり、南極大陸を除く全ての大陸で発見されている[3]。
概要
春から秋にかけて、様々な木材に極めてふつうに発生するキノコである[4]。
傘は灰色と紫の混ざった白色。扇の一種である末広の名の通り、傘が湿った状態では扇形から掌状に開く[5]。柄はなく、傘の一部で基物に付着する[4]。乾いて縮むと猫の足先のように見えることから、『雀巣菌譜』にはネコノテという名前で載っている[5]。 表面側は白色から灰白色でやや粗い毛に覆われていて[4]、傘の裏にはヒダが良く見える。ヒダはその表面に担子胞子を作り出し乾燥すると分裂する。このため英語圏ではSplit Gillという名前で呼ばれる。2万8000種以上の性を持つと考えられている[3]。
利用
タイ王国では食用にも利用されており、日本でも一部の地域では食用キノコとして利用されている[4]。
健康・栄養食品事典によれば、スエヒロタケの培地からシゾフィラン(制がん剤)が分離・開発されている[4]。医薬品として、主に乳がんにおける放射線治療と併用されている[6]。
感染症
スエヒロタケの子実体が人間の脚から発生した記録があり[4]、また菌糸が、ごくまれに抵抗力が落ちたヒトやイヌの肺や気管支に寄生してアレルギー性気管支肺アスペルギルス症同様にスエヒロタケ感染症を引き起した例が知られる[4][7]。
ヒトへの感染例は、1950年から1956年にかけて3例(ただし不確実)、1971年から1992年にかけて4例が報告されている[8]。日本では1989年に千葉大学医学部附属病院で確認され[9]、1994年に千葉大学真核微生物研究センター(当時、1997年に真菌医学研究センターに改組)の亀井克彦らによって報告された[10][8][11]。日本国内では千葉大学真菌医学研究センターで研究が行われている[12]。スエヒロタケを病原真菌とする症例は、2012年までに全世界で71例が報告されており、そのうち33例が日本からの報告である[13][14]。
脚注・参照
- ^ a b c d e f g h i j “Schizophyllum commune”. MYCOBANK Database. 国際菌学協会 (IMA) とウェスターダイク菌類生物多様性研究所. 2025年3月10日閲覧。
- ^ サミュエル・フレデリック・グレイ (1766 – 1828) or ジョン・エドワード・グレイ (1800-1875)
- ^ a b "Tom Volk's Fungus of the Month for February 2000"
- ^ a b c d e f g 安藤洋子「人間から生えたきのこ」、長沢栄史 監修『日本の毒きのこ』学習研究社〈増補改訂フィールドベスト図鑑 13〉、2009年9月28日、167頁。ISBN 978-4-05-404263-6。
- ^ a b 今関六也編『カラー日本のキノコ』(山渓カラーガイド64) 山と渓谷社、1974年
- ^ “種子植物・菌類を利用した健康食品中の有害な成分に関する調査─健康食品の安全性に関するデータシート” (PDF). 食品安全委員会. p. 236 (2004年3月31日). 2012年1月2日閲覧。
- ^ 長谷川篤彦「真菌症の今」(PDF)『日生研たより』第52巻、第4号、日本生物科学研究所、6-9頁、2006年7月 。
- ^ a b 亀井克彦「Schizophyllum commme (スエヒロタケ)によるABPMの1例」『The Japanese Journal of Antibiotics』第48巻、第10号、1607-1609頁、1995年。doi:10.11553/antibiotics1968b.48.1597。
- ^ ただし、これ以前の1980年に日本赤十字社医療センターからの報告例がある。稲木一元; 折津愈; 松井泰夫; 田中勲; 井上雅晴; 太中弘; 武村民子; 森田豊寿 ほか「PIE症候群を呈した Schizophyllum commune (和名スエヒロタケ)感染症の1手術例」『日本胸部疾患学会雑誌』第18巻、第11号、840頁、1980年。doi:10.11389/jjrs1963.18.835。
- ^ Kamei, Katsuhiko; Unno, Hiromichi; Nagao, Keiichi; Kuriyama, Takayuki; Nishimura, Kazuko; Miyaji, Makoto (1994), “Allergic Bronchopulmonary Mycosis Caused by the Basidiomycetous Fungus Schizophyllum commune”, Clinical Infectous Diseases 18 (3): 305-309, doi:10.1093/clinids/18.3.305
- ^ 西村和子 著「肺にきのこが生える?」、日本林業技術協会 編『きのこの一〇〇不思議』東京書籍、1997年2月、146-147頁。ISBN 4-487-75485-2。
- ^ 「目で見る真菌と真菌症シリーズ 1 キノコと感染症」『千葉大学真菌センターニュース』第1号、千葉大学真菌医学研究センター、2-3頁、2002年4月 。
- ^ Chowdhary, A.; Randhawa, H. S.; Gaur, S. N.; Agarwal, K.; Kathuria, S.; Roy, P.; Klaassen, C. H.; Meis, J. F., “Schizophyllum commune as an emerging fungal pathogen: a review and report of two cases”, Mycoses 56 (1): 1-10, doi:10.1111/j.1439-0507.2012.02190.x
- ^ 松脇由典; 小川晴彦; 岩﨑聖子; 宇野匡祐; 若林真理子; 坂本和美; 大櫛哲史; 鴻信義 ほか「環境真正担子菌スエヒロタケ (Schizophyllum commune) によるアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎の検討」『耳鼻咽喉科展望』第56巻、352-362頁、2013年。doi:10.11453/orltokyo.56.352。
外部リンク
- "Schizophyllum commune", MykoWeb
- "Schizophyllaceae", Wikispecies
- アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(スエヒロタケ感染症の記述あり)
- スエヒロタケのページへのリンク