シグマ(ς)タイプ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 05:43 UTC 版)
「古代ギリシア語の格変化」の記事における「シグマ(ς)タイプ」の解説
このタイプには男性名詞と女性名詞が含まれる。 数格閉鎖音ντ語幹流音語幹鼻音語幹軟口蓋音唇音歯音単数 主格 φύλαξ φλέψ λαμπάς λυθείς ἄλς ρίς 属格 φύλακος φλέβος λαμπάδος λυθέντος ἁλός ρινός 与格 φύλακι φλεβί λαμπάδι λυθέντι ἁλί ρινί 対格 φύλακα φλέβα λαμπάδα λυθέντα ἃλα ρῖνα 呼格 φύλαξ φλέψ λαμπάς λυθείς ἄλς ρίς 複数 主格 φύλακες φλέβες λαμπάδες λυθέντες ἃλες ρῖνες 属格 φύλακων φλέβων λαμπάδων λυθέντων ἁλῶν ρινῶν 与格 φύλαξι φλεψί λαμπάσι λυθεῖσι ἁλσί ρισί 対格 φύλακας φλέβας λαμπάδας λυθέντας ἃλας ρῖνας 呼格 φύλακες φλέβες λαμπάδες λυθέντες ἃλες ρῖνες 閉鎖音のタイプでは、閉鎖音子音と-ςの結びつき(単数の主格と呼格、複数の与格)が次のように融合する。γ/κ/χ +ς → -ξ β/π/φ +ς → -ψ δ/τ/θ +ς → -ς 具体例は次のようになる。φυλακ-ς→φύλαξ、μαστιγ-ς→μάστιξ、βηχ-ς→βήξ、γυπ-ς→γύψ、φλεβ-ς→φλέψ、κατηλιφ-ς→κατῆλιψ、ἐσθητ-ς→ἐσθής、λαμπαδ-ς→λαμπάς、κορυθ-ς→κόρυς ντ語幹では、単数の主格・呼格と複数の与格では、-ςの前でντが脱落し、その代償延長として直前の母音が長母音化する。例:λυθεντ-ς→λυθείς、διδοντ-ς→διδούς、ἱσταντ-ς→ἱστάς、δεικνυντ-ς→δεικνύς 鼻音語幹では、-ςの前で鼻音が脱落する。例:ριν-ς→ρίς。その代償延長として、母音が長母音化する。例:ἑν-ς→εἷς 歯音語幹では、呼格でςが脱落する場合がある。例:παῖς、呼格παῖ 1音節語幹のケースでは、単数の属格・与格でアクセントが最終音節(ultima)に置かれ、その他の格では第1音節になる。例:φλέψ、属格φλεβός、対格φλέβα。ただし、βάςでは属格がβάντος、ὤνではὄντος。πᾶςでは複数属格がπάντων、παῖςではπαίδωνとなる。 歯音語幹のποδ-では、アッティカ方言で主格が変則的なποῦςとなる。複数与格はホメロス文体ではπόδεσσι、または、ποσσίとなる。 κτ語幹のνυκτ-とἀνακτ-ではτが脱落する。ρτ語幹のδαμαρτ-では主格でδάμαρとなる。 中性名詞では、単数主格で語尾-ςが付かず、複数の主格・対格・呼格で語尾-αが付く。例えば、σῶμα, -ατοςは複数でσώματαとなる(単数主格では語尾-τが脱落する)。同様に、λυθέν, -έντοςは複数でλυθένταとなる。その他、γάλα, -ακτος(主格で語尾-κτが脱落)、ἓν, -ἑνός(εἷςの中性形。複数は無し)、πᾶν, παντός(主格で語尾-τが脱落)など。Φῶς, φωτός、πέρας, -ατος、κέρας, -ατοςなどもσῶμαと同じ格変化になる。
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