グロスマン・スティグリッツのパラドックス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/26 19:02 UTC 版)
「効率的市場仮説」の記事における「グロスマン・スティグリッツのパラドックス」の解説
サンフォード・J・グロスマンとジョセフ・スティグリッツが1980年に発表した論文における経済学の理論モデルはストロング型の効率的市場仮説について新たな示唆をもたらした。当該論文中で述べられている市場効率性に関するパラドックスをグロスマン・スティグリッツのパラドックス(英: Grossman-Stiglitz paradox)と言う。 グロスマンとスティグリッツは市場参加者が金融資産の真の価値についてノイズを含んだ(非公開の)私的情報を持っている場合の金融資産の価格形成について考察を行った。彼らは合理的期待均衡(英: rational expectation equilibrium、REE)と呼ばれる一般均衡のフレームワークを用いて、金融資産の価格に全ての市場参加者の私的情報が反映されることを示した。 ここで問題になるのが価格から得られる情報があれば、市場参加者の持っている私的情報は資産の真の価値を推測するに当たって有用な追加的情報をもたらさなくなるということである。よって情報収集にコストがかかるのであれば、市場参加者は情報収集を行わず価格から得られる情報で資産の真の価値を推測するほうが合理的となる。しかし、市場参加者が私的情報を持たなければ、そもそも価格に市場参加者の私的情報は反映され得ない。よって情報収集にコストが存在する場合は均衡が存在しなくなる。このような状況を指してグロスマン・スティグリッツのパラドックスと呼ぶ。 この問題はグロスマンとスティグリッツによって定式化されたモデルに限らず、ストロング型の効率性を達成している市場価格について援用できることから大きな影響をもたらした。実証研究においてアナリストの情報が開示された時に価格の補整が行われるという結果(つまりストロング型の効率性が成立していないという結果)がいくつか存在するが、これらの情報は有料情報であり、グロスマンとスティグリッツの結果と整合的になっている。よってストロング型の効率性は成立していないとファーマは1991年の論文で述べている。これらの結果から定量的な手法を取る研究者の多くはウィーク型とセミストロング型の効率性の成否について焦点をあてるようになっている。
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