クロフネサイシン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/19 12:46 UTC 版)
クロフネサイシン | |||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Asarum dimidiatum F.Maek. (1936)[1] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
クロフネサイシン(黒船細辛)[4] |
クロフネサイシン(黒船細辛、学名: Asarum dimidiatum)は、ウマノスズクサ科カンアオイ属の多年草[4][5][6]。
カンアオイ属ウスバサイシン節に属し、茎や葉など、全体がウスバサイシン Asarum sieboldii に似るが、比べるとやや小型で雄蕊が6個、花柱が3個と半減している[5][6]。
特徴
茎の先端に2枚の葉を相対してつけ、冬までには落葉する。葉柄は長さ15cmになり、汚紫色になる。葉身は卵円形から五角形状で、長さ4-6cmになり、先端はとがる。葉の表面は深緑色、裏面は淡色になり、両面の葉脈上に短毛が生える[4][6][7]。
花期は4-5月。葉腋から長さ2-3cmになる直立した花柄を出し、横向きに暗紫色の花を開く。花に花弁は無く、萼裂片が花弁状になる。萼筒は上下から押しつぶしたような編球形で、長さ7-8mm、径約10mmになり、3個の萼裂片は三角状卵形で平開し、先端は内側に屈曲してとがる。萼筒内壁は18個ほどの縦筋がある。花柱は3個で直立し、先端は短い突起になり2列に分かれ、外側に柱頭があり、楕円形になる。雄蕊は6個あり、短い花糸で子房壁に付着する。雄蕊は初め屈曲して葯は下方を向いているが、葯が裂開する頃には直立する[4][6]。染色体数は2n=26[5]。
分布と生育環境
日本固有種[8]。紀伊半島の中部、広島県、四国、九州に分布し、山地の林床に生育する[5][6][9]。
名前の由来
和名クロフネサイシンは、「黒船細辛」の意で[4]、前川文夫 (1936) による命名。花の舷部の色が黒色に近い暗紫色なのでいう[6]。前川は、長崎在住の F.C.Greatrex により、同地において採集されたものをタイプ標本として記載した。原記載論文において、「長崎に産し、舷部内方が黒いのでこの和名を付けた」旨を記している[7]。
種小名(種形容語) dimidiatum は、「二分された」「半分の」の意味[10]。
種の保全状況評価
準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト)
都道府県別のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次の通りとなっている[9]。奈良県-絶滅危惧種、広島県-絶滅危惧I類(CR+EN)、徳島県-絶滅危惧II類(VU)、香川県-絶滅危惧I類(CR+EN)、高知県-準絶滅危惧(NT)、福岡県-絶滅危惧II類(VU)、長崎県-絶滅(EX)、熊本県-準絶滅危惧(NT)、大分県-絶滅危惧II類(VU)、鹿児島県-絶滅危惧II類(VU-r,g)。
利用
ウスバサイシン A. sieboldii 、オクエゾサイシン A. heterotropoides とともに細辛として薬用にされる[6]。
ギャラリー
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葉腋から長さ2-3cmになる直立した花柄を出し、横向きに暗紫色の花を開く。萼筒は上下から押しつぶしたような編球形になる。
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3個の萼裂片は三角状卵形で平開し、先端は内側に屈曲してとがる。花柱は3個で直立し、先端は短い突起になり2列に分かれる。雄蕊は6個あり、短い花糸で子房壁に付着する。
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葉柄は長さ15cmになり、汚紫色になる。葉身は卵円形から五角形状で、長さ4-6cmになり、先端はとがる。
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葉の裏面は淡色になり、葉脈上に短毛が生える。
脚注
- ^ クロフネサイシン 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ クロフネサイシン(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ クロフネサイシン(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.26
- ^ a b c d 菅原敬 (2015)「ウマノスズクサ科カンアオイ属」『改訂新版 日本の野生植物 1』p.62
- ^ a b c d e f g 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.168
- ^ a b 前川文夫「日本産カンアオイ類解説(其九)」『植物研究雑誌 (The Journal of Japanese Botany)』第12巻第1号、津村研究所、1936年、28-35頁、doi:10.51033/jjapbot.12_1_1656。
- ^ 奥山雄大 (2011)「ウマノスズクサ科カンアオイ属」『日本の固有植物』pp.60-62
- ^ a b c クロフネサイシン、日本のレッドデータ検索システム-2025年5月18日閲覧
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1491
参考文献
- 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 1』2015年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム
- 前川文夫「日本産カンアオイ類解説(其九)」『植物研究雑誌 (The Journal of Japanese Botany)』第12巻第1号、津村研究所、1936年、28-35頁、doi:10.51033/jjapbot.12_1_1656。
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