エスメラルダの撃沈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/30 03:44 UTC 版)
5月21日の朝、ペルー艦隊はイキケ沖に姿を現した。チリ艦「コバドンガ」がペルー艦隊を発見し、チリ艦隊も乗員を戦闘配置につけた。輸送船「ラマール」は南へ向けていち早く戦場を離脱した。チリ艦隊はペルー艦隊に対して砲撃を開始したが、装甲を貫通することができなかった。チリ艦「コバドンガ」も南へ向けて逃走を開始した。機関故障のため速力が低下している「エスメラルダ」は逃げることもかなわなかったが、プラット艦長は降伏せず、部下に対して徹底抗戦を命じる訓示を行った。 ペルーのグラウ大佐は、「コバドンガ」の追跡を「インデペンデンシア」に命じ、自らの指揮する「ワスカル」で「エスメラルダ」を攻撃した。当初はチリ艦隊が周囲に機雷敷設をしているとの誤報から接近戦は避けていたが、イキケの陸上砲兵部隊が発砲したところ「エスメラルダ」が移動を始めたため、機雷は存在しないと判断した。「ワスカル」は、「エスメラルダ」へ接近して衝角による体当たり攻撃を加えた。これに対してチリのプラット艦長は接舷しての移乗攻撃を命令して自ら「ワスカル」へ乗り込んだが、砲声のために命令が伝わらず、わずか2名しか続く者がなかった。すぐにプラット艦長らは銃撃で倒された。 その後、「ワスカル」は「エスメラルダ」に対して2度目の衝角攻撃をかけた。このときも「エスメラルダ」からは一中尉に率いられた12人の水兵が「ワスカル」の甲板に飛び移ったが、たちまち全滅した。さらに一回の最後となる衝角攻撃が加えられ、数分後に「エスメラルダ」は沈没した。最後の衝角攻撃を受けた時には、もはや「エスメラルダ」は沈みかけて甲板が低下し、兵が切り込みをすることもできなかった。「エスメラルダ」の乗員197人中で生存者は62人だけだった。一方、「ワスカル」の人的損害は戦死1人、負傷7人だった。
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