イギリス艦隊の命令誤認
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 01:22 UTC 版)
「ドッガー・バンク海戦」の記事における「イギリス艦隊の命令誤認」の解説
またさらに、ビーティーは「敵の後部を攻撃せよ(Engage the enemy’s rear.)」と命令を下すことにした。ドイツ軍の攻撃で無線信号は送れなくなっていたため、この命令は旗旒信号を使って各艦に伝達された。だが、この旗旒信号を掲げる際に、ライオンの信号士は致命的なミスを犯す。前述の「北東に進路を取れ」の信号旗を降ろさないまま「敵の後部攻撃命令」の旗を掲げてしまったのだ。 この時、戦線から脱落したライオンに乗艦していたビーティーに代わって艦隊の直接指揮を執っていたのは、次席指揮官のムーア少将であった。ムーア少将は不可思議な「北東に進路を取れ」と「敵の後部攻撃命令」の旗が同時に掲げられたのを見て、更に北東の方向にはドイツ艦隊の列から遅れているブリュッヒャーがいたため、「敵(艦隊)の後部攻撃」を「敵(ブリュッヒャー)の後部攻撃」と受け止めてしまった。 落伍したライオンを除くイギリス艦隊の巡洋戦艦4隻は、ドイツ艦隊の追撃を中止してブリュッヒャーを囲んで集中砲火を加えた。午前12時10分、ブリュッヒャーは沈没した。 命令の誤認を知ったビーティーは再度の追撃を促すために、ネルソンの「敵と接近して交戦せよ(Engage the enemy more closely.)」という有名な命令を出そうと考えた。だが、通信士は信号表からこの命令を表す信号を見つけられなかった。そのため通信士は、最もビーティーの意図に近いと思われる「敵に接近し続けよ(Keep nearer the enemy.)」という旗ではどうかと尋ねた。ビーティーは了解し、その命令を下すことにした。だが今度は、この命令は各艦には届かなかった。通信士がもたついている間に、艦隊各艦との距離が開いてしまい、信号旗が視認できなくなってしまったのだ。午前11時20分、ドイツ艦隊はイギリス艦隊の射程外に離脱した。
※この「イギリス艦隊の命令誤認」の解説は、「ドッガー・バンク海戦」の解説の一部です。
「イギリス艦隊の命令誤認」を含む「ドッガー・バンク海戦」の記事については、「ドッガー・バンク海戦」の概要を参照ください。
- イギリス艦隊の命令誤認のページへのリンク