アシルCoAデヒドロゲナーゼの欠損による代謝異常
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アシルCoAデヒドロゲナーゼの欠損により脂肪酸の酸化能力が減少し、代謝機能不全となる。中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症(MCADD)は、アシルCoAデヒドロゲナーゼに関わる異常としてよく知られており、脂肪酸酸化障害および生死に関わる代謝疾患を引き起こす。中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症の症状には、絶食不耐、低血糖症、そして乳幼児突然死症候群がある。これらの症状は脂肪の代謝異常によってすぐに現れる。絶食不耐と低血糖症は脂肪の分解により糖を作ることができないためである。また、脂肪酸が血中に蓄積し、血液のpKaが低下しアシドーシスを起こす。 症例の約90%は酵素の突然変異が原因であるため、乳幼児突然死症候群への中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼの関連に関心が持たれている。毎年2万人に1人の乳児が中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症との報告がされている。この突然変異種は劣性であり、中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症患者の両親はしばしばその保因者と診断される。 ヒトにおいて、最も一般的に発生する中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼの変異の位置は、アミノ酸残基Lys-304である。変化した残基には単一点突然変異が生じ、リシン残基はグルタミン酸に変化する。Lys-304は通常、Gln-342, Asp-300, および Asp-346と水素結合を形成することによって周囲のアミノ酸残基と相互に作用するが、リシンの部分がグルタミン酸に変化すると、加わった陰電荷により通常の水素結合が分裂する。この分裂により酵素の折りたたみが変化し、全体の安定性が崩れ、脂肪酸酸化の機能を阻害するようになる。変異が起こることにより酵素の効率は10分の1まで下がる。
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