アウカサウルス
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アウカサウルス | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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骨格復元模型
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Aucasaurus Coria et al., 2002 |
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シノニム | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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アウカサウルス(学名:Aucasaurus、「アウカ・マエボのトカゲ」の意[1])は、アルゼンチンのアナクレト層から発見され、後期白亜紀(サントニアンからカンパニアン)に生息していた中型のアベリサウルス科の恐竜の属[2]。近縁種のカルノタウルスよりも小型であったが、腕が極端に小さく、指がほとんどないなど、いくつかの点でより派生していた[3]。このホロタイプ標本は第13尾椎まで完全に保存され比較的よく解明されており、2002年に記載された時点では最も完全なアベリサウルス科恐竜として知られていた。しかし、頭蓋骨は損傷しており、一部の古生物学者は死に際に何らかの戦闘に関与していたのではないかと推測している[4]。
発見
アウカサウルスのホロタイプは、アルゼンチンのネウケン盆地のアナクレト層を構成する後期白亜紀の層群であるリオコロラド亜層群の産出物から知られており、この層群からは多くの恐竜の化石が発見されている。この堆積層からは多数の竜脚類の卵化石も産出されていることが知られている[5]。タイプ標本は少なくとも11歳の成熟した個体のものである[6]。
概要


アウカサウルスは中型のアベリサウルス類で、全長は5.5メートルから6.2メートル、体重は約700キログラムであった[7][8][9]。アウカサウルスの頭蓋骨はカルノタウルスほど短くなく、また鼻も深くなかった。また、角の代わりに、それぞれの眼の上に一対の低い隆起があった[5]。
頭より後方の骨格
アウカサウルスの小さな腕も角は同族のものと似ていたが、体が小さいため、それに比例して長く、骨にはカルノタウルスに見られるいくつかの骨突起の異常な比率がなかった。アウカサウルスの手は珍しいもので、中手骨は4本あったが、第1指と第4指は存在しなかった。第2と第3には指があったが、非常に短く、爪はなかった[5]。尾椎に見られる特徴は、尾部の筋肉が著しく発達し、硬直していたことを示唆しており、おそらく速く走ることがでこた可能性を示唆している[10]。
脳頭蓋

2015年に Ariana Paulina-Carabajal と Cecilia Succar によってアウカサウルスの頭蓋に関する研究が行われ、医療用CT装置を使用し頭蓋骨の化石がスキャンされた。アルバータ大学の Imagine ソフトウェアを使用し、仮想の3次元内耳および頭蓋骨のエンドキャストが取得され、視覚化された。また、LATEX製の頭蓋骨のエンドキャストも作製された。前脳、中脳、後脳は、アベリサウルス科のマジュンガサウルスとインドサウルスに記載されている形態に類似している。しかし、アウカサウルスはマジュンガサウルスよりも比較的大きい片葉の突起を示している。アウカサウルスの小脳の片葉は8の字型の小片陥凹に囲まれており、その形状と大きさはアベリサウルスに見られるものと似ており、このことからパタゴニアの2つの分類群は頭部をわずかに広範囲に及んで動かすことができたことが示唆される。内耳の回路は形も大きさもマジュンガサウルスの三半規管に似ているが、アウカサウルスの外側三半規管はより短い[11]。
病理学

アウカサウルスのホロタイプの第5及び第6の尾椎は、発達段階における椎骨の分節化の失敗の証拠を示しており、2つの椎骨が癒合している。Baiano et al. (2024) は、これを block vertebrae と呼ばれる先天性異常と解釈している。これは、鳥類以外の獣脚類の化石記録において、この病理学の最も古い例である[12]。
分類
2009年、Novas は Aucasaurus garridoi が Abelisaurus comahuensis のジュニアシノニムである可能性があると示唆した[13]。2010年、グレゴリー・ポールはAucasaurus garridoiを Abelisaurus comahuensis とした[7]。これらの類似点にもかかわらず、他の研究者は両属を別個の属と位置付けており、その後の研究ではアウカサウルスはカルノタウルスなどの他の分類群とより近縁であると示唆されており[10]、一部の研究者はそれらをカルノタウルス族に含められるとしている[14][15][16]。
以下は、2009年に Canalle らが作成したクラドグラムである[15]。
Carnotaurinae |
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脚注
- ^ 『講談社の動く図鑑MOVE 恐竜 新訂二版』千葉謙太郎 監修、講談社、2024年11月26日、146頁。ISBN 978-4-06-536967-8。
- ^ The Theropod Database on Aucasaurus
- ^ Coria, R. A.; Chiappe, L. M.; Dingus, L. (2002). “A new close relative of Carnotaurus sastrei Bonaparte 1985 (Theropoda: Abelisauridae) from the Late Cretaceous of Patagonia”. Journal of Vertebrate Paleontology 22 (2): 460. doi:10.1671/0272-4634(2002)022[0460:ANCROC]2.0.CO;2.
- ^ Dingus, Lowell; Chiappe, Luis M.; Coria, Rodolfo A. (2007). “Chapter 8 – What Other Dinosaurs Lived at Auca Mahuevo?”. Dinosaur Eggs Discovered!: Unscrambling the Clues. Twenty-First Century Books. pp. 83. ISBN 978-0822567912
- ^ a b c Benton, Michael J. (2012). Prehistoric Life. Edinburgh, Scotland: Dorling Kindersley. p. 320. ISBN 978-0-7566-9910-9
- ^ “Osteohistology of Aucasaurus garridoi (Dinosauria, Theropoda, Abelisauridae): inferences on lifestyle and growth strategy”. Historical Biology: An International Journal of Paleobiology 35 (5): 693–704. (2022). doi:10.1080/08912963.2022.2063052.
- ^ a b Paul, G.S. (2010). The Princeton Field Guide to Dinosaurs. Princeton University Press. pp. 79. ISBN 9781400836154
- ^ Grillo, O. N.; Delcourt, R. (2016). “Allometry and body length of abelisauroid theropods: Pycnonemosaurus nevesi is the new king”. Cretaceous Research 69: 71–89. Bibcode: 2017CrRes..69...71G. doi:10.1016/j.cretres.2016.09.001.
- ^ de Souza, G.A.; Soares, M.B.; Brum, A.S.; Zucolotto, M.; Sayão, J.M.; Weinschütz, L.C.; Kellner, A.W.A. (2020). “Osteohistology and growth dynamics of the Brazilian noasaurid Vespersaurus paranaensis Langer et al., 2019 (Theropoda: Abelisauroidea)”. PeerJ 8: e9771. doi:10.7717/peerj.9771. PMC 7500327. PMID 32983636 .
- ^ a b Baiano, M. A.; Coria, R.; Chiappe, L. M.; Zurriaguz, V.; Coria, L. (2023). “Osteology of the axial skeleton of Aucasaurus garridoi: phylogenetic and paleobiological inferences”. PeerJ 11: e16236. doi:10.7717/peerj.16236. PMC 10655716. PMID 38025666 .
- ^ Paulina-Carabajal, A.; Succar, C. (2015). “The endocranial morphology and inner ear of the abelisaurid theropod Aucasaurus garridoi”. Acta Palaeontologica Polonica. doi:10.4202/app.2013.0037 .
- ^ Baiano, Mattia A.; Cerda, Ignacio A.; Bertozzo, Filippo; Pol, Diego (2024-01-31). “New information on paleopathologies in non-avian theropod dinosaurs: a case study on South American abelisaurids”. BMC Ecology and Evolution 24 (1): 6. Bibcode: 2024BMCEE..24....6B. doi:10.1186/s12862-023-02187-x. ISSN 2730-7182. PMC 10829224. PMID 38291378 .
- ^ Novas, F.E. (2009). The Age of Dinosaurs in South America. Indiana University Press. pp. 281. ISBN 9780253352897
- ^ Ezcurra, M.D.; Méndez, A.H. (2009). “First report of a derived abelisaurid theropod from the Bajo de la Carpa Formation (Late Cretaceous), Patagonia, Argentina”. Bulletin of Geosciences 84 (3): 547–554. doi:10.3140/bull.geosci.1106 .
- ^ a b Canale, J. I.; Scanferla, C. A.; Agnolin, F. L.; Novas, F. E. (2009). “New carnivorous dinosaur from the Late Cretaceous of NW Patagonia and the evolution of abelisaurid theropods”. Naturwissenschaften 96 (3): 409–414. Bibcode: 2009NW.....96..409C. doi:10.1007/s00114-008-0487-4. hdl:11336/52024. PMID 19057888 .
- ^ Juárez Valieri, R.D.; Porfiri, J.D.; Calvo, J.O. (2011). “New information on Ekrixinatosaurus novasi Calvo et al. 2004, a giant and massively-constructed Abelisauroid from the "Middle Cretaceous" of Patagonia”. In Calvo; González; Riga et al.. Paleontología y dinosarios desde América Latina. pp. 161–169
固有名詞の分類
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