ひずみエネルギーの放出
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/22 04:21 UTC 版)
アーウィンは、き裂先端の塑性領域はき裂の大きさに比べて小さければき裂が成長するために必要なエネルギーはき裂先端の応力にそれほど致命的には依存しないということを初めて観測した。換言すれば、純粋な弾性力学による解で破壊に有効なエネルギー量を求めるために使えるということだ。 き裂成長によるエネルギー放出率またはひずみエネルギー放出率(英語版)は、き裂成長の面積当たりの弾性ひずみエネルギーとして求められる。すなわち、 G := [ ∂ U ∂ a ] P = − [ ∂ U ∂ a ] u {\displaystyle G:=\left[{\cfrac {\partial U}{\partial a}}\right]_{P}=-\left[{\cfrac {\partial U}{\partial a}}\right]_{u}} ここで U {\displaystyle U} は系の弾性エネルギー、 a {\displaystyle a} はき裂長さである。荷重 P {\displaystyle P} または変位 u {\displaystyle u} は上記の計算をする際には定数とする。 アーウィンは面内開口形(モードI)においてひずみエネルギー放出率と応力拡大係数の関係を次のように示した: G = G I = { K I 2 E plane stress ( 1 − ν 2 ) K I 2 E plane strain {\displaystyle G=G_{I}={\begin{cases}{\cfrac {K_{I}^{2}}{E}}&{\text{plane stress}}\\{\cfrac {(1-\nu ^{2})K_{I}^{2}}{E}}&{\text{plane strain}}\end{cases}}} ここで、 E {\displaystyle E} はヤング率、 ν {\displaystyle \nu } はポアソン比、 K I {\displaystyle K_{I}} はモードIにおける応力拡大係数である。また、アーウィンは線形弾性体の平面のき裂によるひずみエネルギー放出率は、最も一般的な荷重条件において、モードI、面内せん断形(モードII)および面外せん断形(モードIII)のそれぞれの応力拡大係数により表されるとした。 次に、アーウィンは脆性破壊の間エネルギー散逸領域の大きさと形状は近似的に一定であるとの追加の仮定を採用した。この仮定はき裂表面を生成するために必要なエネルギーは材料の素材のみに依存して一定であるということを示唆している。この新たな材料の物性値は破壊靱性と名付けられ、 G I c {\displaystyle G_{\mathrm {Ic} }} と表記される。今日において、平面ひずみの条件下で求められた臨界応力拡大係数 K I c {\displaystyle K_{\mathrm {Ic} }} は線形弾性破壊力学を決定付ける値として受け入れられている。
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