ぞうげのとう

実用日本語表現辞典

象牙の塔

読み方：ぞうげのとう
別表記：tour d'ivoire
英語：ivory tower

象牙の塔（ぞうげのとう）とは、学問の世界に閉じこもる学者の研究姿勢・学究的態度が、閉鎖的かつ理想主義的であり、世俗とは無縁の・世俗の実情からかけ離れたような・現実逃避にも見えるような様子である、と批判する意味で用いられる表現。

そもそも「象牙の塔」はフランス語の「(la) tour d'ivoire」の訳語であり、19世紀フランスの文芸評論家ブーヴ（Sainte-Beuve）が、厭世的で孤高・高慢な作風で知られる作家ヴィニー（Alfred de Vigny）を皮肉る表現として用いたのが初出とされている。

日本では戦前に人気を博していた文芸評論家・厨川白村（くりやがわ-はくそん）がエッセイ集「象牙の塔を出て」などで言及し、広く知られるようになったとされる。

（2020年11月17日更新）

デジタル大辞泉

ぞうげ‐の‐とう〔ザウゲ‐タフ〕【象牙の塔】

読み方：ぞうげのとう

《(フランス)tour d'ivoire》芸術至上主義の人々が俗世間を離れて楽しむ静寂・孤高の境地。また、現実から逃避するような学者の生活や、大学の研究室などの閉鎖社会。フランスの文芸評論家サント＝ブーブがビニーの態度を評した言葉で、厨川白村(くりやがわはくそん)がこれを紹介した。

隠語大辞典

象牙の塔

読み方：ぞうげのとう

1. 実利主義の現実生活から脱れて、極め閉静な理想境に遊ぶことをいふ。
2. 醜悪な世界から逃れて淋しい生活をしてる人々の隠家（かくれが）。〔隠語〕
3. 現代物質文明の乾燥無味の生活を免れ自己のみ別天地に寂しく自我生活をなさんとせる人の美郷、隠家。
4. 現代文明の無味乾燥なのに飽きて、自己のみ別天地に自我生活を営む詩美郷の隠家。研究に没頭し、社会と交渉を遮断した大学の研究室。
5. 自分独りの天地に安逸を貪つている境地を、フランスのヴイニーが評した語で、世間知らずの嘲語として用う。

隠語大辞典は、明治以降の隠語解説文献や辞典、関係記事などをオリジナルのまま収録しているため、不適切な項目が含れていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ。