これまでの小惑星探査とラブルパイル天体
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「ラブルパイル天体」の記事における「これまでの小惑星探査とラブルパイル天体」の解説
木星探査機ガリレオが小惑星帯を通過する際、1991年10月18日にフローラ族に属する小惑星 (951) ガスプラをフライバイしたことが小惑星探査の始まりであった。ガリレオはガスプラにあまり接近しなかったためにガスプラの質量は調査されておらず、現在のところガスプラについてラブルパイル天体であるかどうか判断する材料は少ない。 ガリレオは引き続き1993年8月28日にコロニス族に属するS型小惑星 (243) イダにフライバイを行った。イダに関しては質量が推定され、その結果イダの密度は約2.6g/cm3、内部空隙率は30パーセント前後と推定された。この値はイダが破片の寄せ集めであるラブルパイル構造を持っていることによるものか、それとも内部に大きな割れ目がある一枚岩の天体であるのか、どちらの可能性も考えられる数値であり研究者間の見解も分かれた。なおイダには衛星ダクティルが発見されたが、ダクティルはイダに他の小天体が衝突することによって形成されたという説とともに、母天体の衝突破壊によってコロニス族が形成された際にイダと同時に形成されたとの説がある。 続いてNEARシューメーカーが、1997年6月27日にC型小惑星 (253) マティルドのフライバイを行った。観測によりマティルドの密度は1.3g/cm3、内部空隙率は50パーセントを越えるとの結果が出され、ラブルパイル天体である可能性が強いとされたが、フライバイによる短期間の調査であったこともあり、岩塊が集積することによって形成されたラブルパイル天体かどうかは確定されなかった。 宇宙探査機NEARシューメーカーは2000年2月14日に、S型小惑星 (433) エロスの周回軌道に入り、約1年間にわたって観測を行った。観測結果からエロスの密度は約2.67g/cm3と推定され、内部空隙率は約30パーセントでイダの数値に近いことがわかった。エロスについては約1年間にわたって詳細な観測が実施された結果、表面に多彩かつ大規模な構造地形が見られることがわかり、エロス表面に形成されたクレーターも構造地形の影響を受けて多角形となっている例も観測された。エロスは大規模な構造地形を保ち続けており、衝突クレーターもエロス自体の構造地形の影響を受けた形となっていることから、破片の寄せ集めで天体自体の強度が弱いラブルパイル天体ではなく、物質同士が結合した内部構造を持つ天体で、内部に大きな割れ目(構造地形)があるものと推定された。またエロスの質量重心と形状的な重心がほとんど同じ場所であることも明らかとなり、この点からもエロスは内部に割れ目が存在するものの、物質同士が結合した内部構造を持つ天体であることを示唆している。
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