『彼らの目は神を見ていた』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/13 07:10 UTC 版)
「ゾラ・ニール・ハーストン」の記事における「『彼らの目は神を見ていた』」の解説
1937年9月、代表作『彼らの目は神を見ていた』を発表した。ハーストンはこれまでの調査・執筆活動で黒人独自の民族性や文化を探求してきたが、この姿勢は小説においても同様であり、『彼らの目は神を見ていた』はフロリダの地方都市を舞台とし、登場人物は、誇り高く自立心の強い女性主人公ジェイニー・クロフォードをはじめ、ほとんどが黒人である。したがって、白人社会への批判や抗議、差別構造の分析といった政治的・社会的企図はほとんど見られず、人種差別や貧困によって虐げられた黒人たちの社会的現実を描き、真の黒人の姿、「意識の高い黒人像」を提示しようとする黒人文学の主流派から反感を買うことになった。とりわけ、リチャード・ライトからは「(ハーストンは)深刻な小説という方向に向かうつもりは一切ないらしい」、『彼らの目は神を見ていた』には「何のテーマも、何のメッセージも、何の思想もない」と批判された。また、これまでハーストンの才能を高く評価していたアラン・ロックは、「説得力のある物語を語る術を心得ていること。これはハーストンの生まれ持った才能であるが、このような成熟した黒人小説家が、人を動かす小説、社会的現実を客観的かつ詳細に描く小説に取り組むのはいつのことだろうか」と嘆いている。
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